地球儀
本文約4,000字 ・ 読了時間 約9分
あらすじ(AIが作成しました)
祖父の十七回忌のため帰省した主人公は、父の放蕩により困窮する母の姿を目の当たりにする。家の押入れには、かつて父がアメリカにいた頃、祖父が団欒のために買い与えた古い地球儀が眠っていた。かつては家族の夢を象徴したその地球儀も、今では母にとってただの邪魔な荷物に過ぎない。父の不在と自身の無力感に苛まれる中、主人公は複雑な家庭環境と向き合いながら、親族が集う法事の場で父の代わりを務める重圧と不安に揺れ動く。
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祖父の十七年の法要があるから帰れ――といふ母からの手紙で、私は二タ月振り位ひで小田原の家へ帰つた。
「此頃はどうなの?」私は父のことを訊ねた。
「だん/\悪くなるばかり……」母は押入を片附けながら云つた。続けて、そんな気分を振り棄てるやうに、
「此方の家はほんとに狭くて斯んな時には全く困つて了ふ。第一何処に何が蔵つてあるんだか少しも解らない。」などと呟いてゐた。
「僕の事をおこつてゐますか?」
「カンカン!」母は面倒くさゝうに云つた。
「ふゝん!」
「これからもうお金なんて一文もやるんぢやないツて――私まで大変おこられた。」
「チエツ!」と私はセヽラ笑つた。屹度さうくるだらうとは思つてゐたものゝ、明らかに云はれて見るとドキツとした。セヽラ笑つて見たところで、私自身も母も、私自身の無能とカラ元気とを却つて醜く感ずるばかりだ。
「もうお父さんの事はあてにならないよ。あの年になつての事だもの……」
これは父の放蕩を意味するのだつた。
「勝手にするがいゝさ。」私はおこつたやうな口調で呟くと、如何にも腹には確然とした或る自信があるやうな顔をした。斯んなものゝ云ひ方や斯んな態度は、私が此頃になつて初めて発見した母に対する一種のコケトリーだつた。だが私が用ふのは何時も此手段の他はなく、さうして其場限りで何の効もないので今ではもう母の方で、もう聞き飽きたよといふ顔をするのだつた。
「もう家もお終ひだ。私は覚悟してゐる。」と母は云つた。
私は、母が云ふこの種の言葉は凡て母が感情に走つて云ふのだ、といふ風にばかり事更に解釈しようと努めた。
「だけど、まアどうにかなるでせうね。」私は何の意味もなく、たゞ自分を慰めるやうに易々と見せかけた。斯んな私の楽天的な態度にもすつかり母は愛想を尽してゐた。
母は、ちよつと笑ひを浮べた儘黙つて、煙草盆を箱から出しては一つ一つ拭いてゐた。
私も、話だけでも父の事に触れるのは厭になつた。
「明日は叔父さん達も皆な来るでせう。」
「皆な来ると云つて寄こした。」
また父の事が口に出さうになつた。
「躑躅が好く咲いてる。」と私は云つた。
「お前でも花などに気がつく事があるの。」