赤い船のお客
本文約3,500字 ・ 読了時間 約8分
あらすじ(AIが作成しました)
二郎は街道で出会った白ひげの老人から、吹くと不思議な幻が見える笛を譲り受ける。砂山で笛を吹くと、沖に赤い船が現れ、幻の人々が姿を現した。二郎は笛の秘密を探ろうとして穴を突き、笛を壊してしまう。その後、砂山には色とりどりの花が咲き乱れ、笛で見えた姿に似た旅の女が赤い船の客として町に滞在していることを知る。不思議な体験と少年の心情の変化を描く。
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ある、うららかな日のことでありました。
二郎は、友だちもなく、ひとり往来を歩いていました。
この道を、おりおり、いろいろなふうをした旅人が通ります。
彼はさも珍しそうに、それらの人たちを見送ったのであります。
二郎は、こうして街道を歩いてゆく知らぬ人を見るのが好きでした。
さまざまなことを空想したり、考えたりしていると、独りでいてもそんなにさびしいとは思わなかったからです。
暖かな風が、どこからともなく吹いてくると、乾いた白い往来の上には、ほこりが立ちました。
まだ、おそ咲きのさくらの花が、こんもりと、黒ずんだ森の間から見えるのも、いずれも、なつかしいやるせないような気持ちがしたのであります。
その日も、二郎は独りあてもなく、街道を歩いていました。
車の音が、あちらへ夢のように消えてゆきます。
薬売りかなぞのように、箱をふろしきで包んで負った男が、下を向いて過ぎていってからは、だれも通りませんでした。
二郎は、寺の前の小さな橋のわきに立って、浅い流れのきらきらと日の光に照らされて、かがやきながら流れているのを、ぼんやりとながめていました。
彼はほんとうに、このときはさびしいと思っていたのであります。
ちょうど、このとき、奥深い寺の境内から、とぼとぼとおじいさんがつえをついて歩いて出てきました。
おじいさんは、白いひげをはやしていました。
二郎は、そのおじいさんを見ていますと、おじいさんは、二郎のわきへ近づいて、ゆき過ぎようとして二郎の頭をなでてくれました。
「いい子だな、独りでさびしいだろう。」と、おじいさんはいいました。
二郎は黙って、おじいさんの顔を見ていました。
おじいさんは、たもとの中から、短い笛を取り出しました。
「この笛を坊やにやるから、あちらの丘へいって吹いてごらん。これはいい音が出るよ。」といいました。
二郎はおじいさんから、その笛をもらいました。
おじいさんの顔は、いつも笑っているように柔和に見えました。
おじいさんは、あちらへつえをつきながらいってしまいました。
二郎はその笛を持って、あちらの砂山にゆきました。
このあたりは海岸で、丘には木というものがなかったのです。