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TORENDIA

負傷した線路と月

本文約4,100字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

平原を走るレールは、重い貨物を運ぶ汽罐車によって傷つけられ、そばに咲く花に悲しみを打ち明ける。レールをいたわる雨は、慈悲深い月が救ってくれると諭す。やがて夜になり、願いを聞き入れた月は犯人の汽罐車を捜し求める。月は停車場で疲弊した汽罐車と対話し、さらに荷を積んだ船や夜の街を訪れる。本作は、レールや汽罐車といった無機物の視点から、この世の繋がりや運命を優しく見つめる物語である。

小川未明

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🎧 負傷した線路と月 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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レールが、町から村へ、村から平原へ、そして、山の間へと走っていました。

そこは、町をはなれてから、幾十マイルとなくきたところでした。ある日のこと、汽車が重い荷物や、たくさんな人間を乗せて過ぎていきましたときに、レールのある部分に傷がついたのであります。

レールは、痛みに堪えられませんでした。そして泣いていました。自分ほど、不運なものがあるだろうか。毎日、毎日、幾たびとなしに、重い汽罐車に頭の上を踏まれなければならない。汽罐車は、それをば平気に思っている。そればかりでなく、太陽が、身を焼くほど、強く照らしつける。日蔭にはいろうとあせっても自由に動くことができない。太い釘が自分の体をまくら木にしっかりと打ちつけている。考えてみると、いったい自分の体というものはどうなるのであろうか……と、レールは、思って泣いていました。

「どうなさったのですか?」と、そばに咲いていた、うす紅色をしたなでしこの花が、はじらうように頭をかしげてたずねました。

いつも、この花は、なぐさめてくれるのであります。こういわれて、レールはうれしく思いました。

「いえ、さっき、汽罐車が、傷をつけていったのです。たいした傷ではありませんけれども、私は、身の上を考えてつくづく悲しくなりました。それで泣いていたのです。」と、レールは、答えました。

「まあ、そうでしたか……。あなたのような、強い方がお泣きなさるのは、よくよくのことでございましょう。私どもだったら、どうなってしまったかしれない。そういえば、さっきたくさんの材木と、米だわらと、石炭と、なにかの箱を、いっぱい貨車に積んでいきました。そして、今日は客車もいつもよりか長かったようでございました。山のあちらには、海があり、また、温泉などもありますから、そこへいく人たちでにぎわっていたのでしょう。それにしても、あなたの傷が、たいしたことがありませんで、ようございましたこと。」と、花は、しんせつにいいました。

レールは、きらきらと光る顔を花の方に向けて、

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