男の子たちはみんな、体中まつ黒にしたいと思ひました。色のなまつ白い男の子なんかは、この漁師の村ではバカにされました。それに夏休みがすんで九月になると、村の小学校では「黒んぼ会」があるのでした。
「今年は、誰が一等賞になるだらう?」
黒んぼ会は、学校中で一番日に焼けた男の子だけ三人選んで、黒いふんどしの賞品をくれるのでしたが、それには会のマークが入つてゐるので、みんな欲しかつたのです。
「ちきしよう、今年は僕がもらふんだぞ。」
「君なんぞ駄目だい。ふんどしの下が白いぢやないか。」
「ぢや、君だつて駄目だい。足の裏が白いぢやないか。」
「足の裏はいいんだぞ。」
「いや、駄目なんだい。去年から徴兵検査みたいに、お尻も足の裏も見るんだから。」
夏休みの終り頃になると、男の子たちは一層色を黒くしようとして、黒いふんどしの下や、足の裏まで日に焼くのでした。
みんな黒んぼ会を、大へん楽しみにして待ちましたが、郵便局の清ちやんだけは、ただ一人ビク/\して恐れてゐました。
清ちやんは尋常二年ですが、去年の黒んぼ会には、一番体が白くて、みんなから「白瓜」といふあだなをもらひました。それは、体の弱いお母さんと一緒に、涼しい山へ避暑に行つてゐたので、村の漁師の子供たちのやうに、一日裸体で海につかつてゐられなかつたからです。
清ちやんは「白瓜」と云はれたことが、とても辛かつたので、今年はどこへも行かずに、暇さへあれば舟を借りて、近所のお爺さんと釣に出たり、浮環をもつて泳いだり、また蝉とりをして日に焼けました。けれどいつも靴をはいてゐるので、跣足になると、足だけ白つぽいのでした。
「困つたなあ、足まで見るんだつて……」
清ちやんが、お尻や足の裏まで見られることを聞いて来て話すと、お母さんは目を円くされました。
「へんな黒んぼ会ねえ。そんなんだつたら、その日だけお休みよ。丈夫でさへあれば、色なんか白くつたつていいんですから。」
「だつて……」
清ちやんは、その日だけ休むと、きつとまた何とか云はれるにきまつてゐるので、その日までに、どうかして、白い自分の足を黒くしたいと思ふのでした。