母の日
本文約5,300字 ・ 読了時間 約11分
あらすじ(AIが作成しました)
五月の第二日曜を控えた土曜日、母親をいたわるため四人の子供たちは内緒で夕食作りを計画する。それぞれが小遣いを持ち寄り、市場で食材を分担して買い揃える。子供たちは母親を台所へ入れず、協力してコロッケや煮物、汁物を用意する。夕食時、兄弟はアメリカ発祥の母の日に倣って、この日の食事を準備した経緯を伝える。母親と父親は子供たちの成長と気遣いに深い喜びを感じ、家族全員で温かい食卓を囲む。
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一 新しいランドセルを脊負ひ、新しい草履袋をさげて、一年生の進ちやんは、元気よく学校から帰つて来ました。
「ただいまア!」
「はい、お帰りなさい。早かつたわねえ。」
さう云つてお母様が、すぐニコニコして玄関に出ていらつしやると、進ちやんは帽子をとり、靴をぬぎながら、お母様にききました。
「ママ、今日、ほんとに何も買はなかつた? ほんとに、夕御飯のおこしらへ、なんにもしてない? お野菜なんか、ほんとに買つてないかア?」
お母様は、進ちやんの帽子と草履袋とを取上げて、ニコニコしておつしやいました。
「ええ、ほんとに、なんにも買はなかつたわ。だつて、今朝みんなにお約束したんですもの。」
「あツ、うれしい、助かつた! 僕、お使ひに行くのがうれしくつてね、走つて帰つたの。ねえママ、ランドセルや筆入も、僕の脊中でね、一ツ二ツ・ガッチャガチャ、左ツ右ツ・ガッチャガチャつて、さわぐんだよ。きつと、うれしいんだね、ママ。」
「ホホウ、さうかしら?」
「さうだよ、ほんとにさうなんだよ、ママ。今日はうちの『ママの日』なんだもの。ねえ、まだ姉ちやんも兄ちやんも帰つて来ない?」
「ええ。まだお午すぎですもの。一時ごろになると、純子ちやんが帰つて来るでせうし、二時ごろに耕一さん、三時ごろに蓉子姉ちやんが帰つて来るはずだわ。」
「ぢや、僕、ひとりで先にお使ひに行つて来ようかな。ねママ、僕ねえ、いいもの買つて来てあげるのよ。あててごらん。ママの大好きなもの。あてたら、えらい。」
「さあ、なんでせうね?」
「あてたら、えらい!」
「さあ、なんですかねえ?」
そんなことを云ひながら、進ちやんとお母様は、子供部屋に入つて来ました。
「ねえ、わかんない、ママ。」
「わかんないわ。ほんとに、なんでせう?」
「僕の買つて来るものねえ――云つちやをか――ねえ、三ツ葉を五銭と、にんじんを二三本。それだけ。」
「あら、あんた、そんなもの、ひとりで買つて来られるの?」