TORENDIA
さらわれた兄よ
槇本楠郎
TORENDIA
さらわれた兄よ
本文約540字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
夜明け前の静寂を破り、突然乱入した集団に兄が拉致される。荒らされた家の中で一人取り残された妹は、寒さと恐怖、そして理不尽な連行への憤りを募らせる。なぜ党を守ることが罪なのかと問いかけ、連れ去られた兄へ向けた怒りと共鳴の思いを綴る。妹は党の力を高めることで、奪われた兄を必ず奪還し、奴らを迎え撃つと誓い、奪還の時を期して結束を強めていく覚悟を描く。
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まるで野中の鶏小舎を襲う野犬のように
奴等は一言も吠えず踏込んで来た
寝ていた兄はガバとはね起き
突嗟に雨戸を押倒して奴等を踏みつけた
けれど奴等は一人ではなかった
すぐ躍りかかる奴があった
兄は組み敷かれた
兄は引っ立てられた
奴等は遂に兄をかっぱらって行ってしまったのだ
それは今朝の五時頃だった
うす明りの今
藁屋根に下る牙のような氷柱は
しずかにとけて唇を指ではじくような
しめっぽいやわらかい音を立てている
踏みにじられた貧しい住居は
古蒲団に泥靴の痕を残し
兄の寝床は藻抜けのまま冷え冷えとさらされている
妾はただ一人だ
お櫃の飯は柘榴の実のように凍り
湯をかけても喉をこさない
しずかに天井を鼠が走り
茶碗の湯気が頬を撫でる
妾はくやしさで胸が一ぱいだ
何故「兄弟」に呼びかけることが悪いのか?
何故わたしたちが自分たちの党をつくり
党を守ることが悪いのか?
兄よ
さらわれて行った兄よ
あなたの後へはすぐ続く者がある筈だ
あなたをこぼれ種子に捨て置く筈がどうしてありましょう
どうかお心丈夫に
わたしたちも今にこのしかえしはして見せる
奴等を迎え討つ!
それはわたしたちの力の充実した時果たされるのです
わたしたちは党の力を充満させよう
そしてわたしたちは必ずあなたを取返す
今に、きっと今に!
(『戦旗』一九三〇年三月臨時増刊号に発表)
完
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