はるか北の方の島で、夏のあいだ、働いていました人々は、だんだん寒くなったので、南のあたたかな方へ、ひきあげなければなりませんでした。
「お別れに、みんな集まって、たのしく一晩おくりましょう。」と、それらの人たちは、話しあいました。
丘の上に、一つの小屋があります。それには、赤い窓がついていました。ある晩のこと、彼らは、そこへ集まりました。そこで、男も女もまじって食卓についたのです。食卓の上には、いろいろのくだものや、魚や、鳥や、獣物の肉などがならべられ、また、色のかわった酒が、めいめいの前においてあったコップに、そそがれていました。
このかんばしいにおいは、小屋の窓から外へながれでたのです。島にすんでいたきつねは、このにおいをかいで、たまらなくなりました。そして、どこからながれてくるのだろうと思って、さがしにきました。
きつねは、小屋の中で、人間たちが、たのしそうにごちそうを食べているのをながめました。外は、暗くなって、夕やけは、わずかに森の頭にのこっているばかりです。これにひきかえて、へやのうちは昼間のように明るかった。
「人間は、ああして、たのしそうに暮らしているが、私たちは、いつも、おなじくらしでつまらない。」と、きつねは、思って、こちらの木の下に立って、ひらかれた窓から見える中のようすに見とれていたのです。
そのうちに、食事をおわったとみえて、みんなは、食卓からはなれて、歌をうたい、楽器をならして、ダンスをはじめました。中にも、女たちは、美しかった。みんなが、いちばんいい着物をきて、持っているだけの指輪をはめてきたからです。そして、男も、女も、調子をとって、おもしろそうにおどったのでした。指輪についている宝石からは、青い光や、金色の光が、女たちのからだを動かし、手をふるたびにひらめいたのでした。
「まあ、なんという美しいことだろう。」と、きつねは、感心してながめていました。がんらい、道化者のきつねは、いつしか、見ているうちに、自分までうかれごこちになって、みょうな腰つきをしておどりだしたのでした。