自由
本文約2,600字 ・ 読了時間 約6分
あらすじ(AIが作成しました)
街の鳥屋で窮屈なかごに入れられた一羽のいかるがを買った語り手は、短く切られた尾や傷ついた羽を見て、人間の冷酷さと自らの加担に良心の呵責を感じる。自由への憧れを抱きながらかごの中で空を仰ぐ姿に耐えられず、語り手は鳥を逃がす決意をする。傷ついた羽で懸命に空へ舞い上がる鳥の姿に、自由を奪われた者たちの切実な叫びを重ね、人間の勝手な都合で他者の自由を束縛する社会の矛盾と、そこに無自覚な人間世界の在り方を深く憂慮する。
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街の鳥屋の前を通ったとき、なんという鳥か知らないけれど、小鳥にしては大きい、ちょうど小さいはとのような形をした鳥が、かごの中にいれられて、きゅうくつそうに、じっとしていました。
黄色なくちばし、その鈍重なからだつき、そして、たえずものおじする、つぶらな黒い目を見ると、いじらしいという感じをさせられた。私は、この鳥をきらいでなかったのです。
「こんなに、狭いかごへいれられたのでは、身動きもできないだろう。」
自分の家には、これよりは、大きな空きかごのあることが頭に浮かびました。で、ついこの小鳥の価をきいてみる気になりました。
鳥屋のかみさんは、さっそく、店さきへ出てきたが、価は、あまり安くなかった。しかし、一度買おうと思った心は、すこしくらいのことで、また、やめる気にもなれなかったのです。それほど、私は、この鳥をほしくなりました。子供の時分、村はずれの林や、寺の墓地などへ、おとりの鳥かごをさげていって、ひわや、しじゅうからなどを捕らえたことを思い出すと、どこからともなく、すがすがしい土の香がして、木の間をくぐってくる冷ややかな風が、身にしみて、もう久しいこと忘れていた生活に、ふたたび魂がよみがえるように、急に、体じゅうがいきいきとしたのであります。
「こんなに、小さいかごにいれておいてもいいのだろうか。」
「この鳥には、すこしかごが、小さすぎますね。もっと大きなのにいれてやれば、ほんとうはいいのですが。」と、かみさんは、答えた。
なぜ、そうわかっていたら、そうしてやらないのだろう? 鳥は、ものがいえないから、されるままになって、ただ餌を食べて、生きている。しかし、そのようすを見ると、それに満足しているようにも思われるが、それも、ものがいえないからだろうと考えられるのでした。
私は、紙袋の中へ、鳥をいれてもらって、家に帰り、もっと大きなかごにいれてやりました。鳥は、知らぬ場所にきたので、いっそう、ものおじして、目をぱちくりしていました。
「この鳥は、よほど臆病とみえるな。」
私は、目をこらして、鳥を見ているうちに、鳥の長いはずの尾が、短く切られているのを発見したのです。