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TORENDIA

街の幸福

本文約2,700字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

盲目の父親と十二、三歳の少年は、日暮れになると銀行の前でバイオリンを弾き、歌をうたって日銭を稼いでいる。生活は困窮しているが、向かいのたばこ屋に座る美しい娘が毎夜のように施しをくれることで、二人は心の支えを得ていた。やがて新聞に孝行少年として取り上げられると生活は安定するが、娘は姿を消す。月日が流れ、工場で不具者となった少年が再び同じ場所へ立つ姿を描く。

小川未明

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🎧 街の幸福 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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盲目の父親の手を引いて、十二、三歳のあわれな少年は、日暮れ方になると、どこからかにぎやかな街の方へやってきました。

父親は、手にバイオリンを持っていました。二人は、とある銀行の前へくると歩みをとめました。そこは、石畳になっていて、昼間は、建物の中へはいったり、出たりする人々の足音が鳴るのであったが、夜になると、大きな扉は閉まって、しんとして、ちょうど眠った魔物のように、建物は、黒く突っ立っていました。

親子のものには、このうえない、いい場所であったのです。ほかの人に、その場所を取られてはならないと思って、まだ、あたりの暗くならないうちから、やってきて、しょんぼりと、扉のわきに背を寄せて立っていました。

やがて、街には、燈火が、花のように輝いて、頭の上の空は、紫色に匂い、星の光があちら、こちらと、ちりばめた宝石の飾りのようにきらめきはじめると、街の中を、ぞろぞろと男女の群れが、ざわめきたって流れたのでした。

もう、人々の顔は、そんなに、はっきりとわかりませんでした。このとき、父親は、頭をすこしかしげぎみにして、バイオリンを弾き、少年は、それに合わせて、唄をうたいました。童謡もあれば、また、流行歌のようなものもうたったのであります。

前を通りすぎる人々は、ただ、こちらを見て、いってしまうのや、また、ちょっと立ち止まって、二人の顔をのぞきこんで歌も聞かずに、去ってしまうのもあり、あるいはしばらくたたずんで、バイオリンの音と、少年の歌うのを聞いているものもありました。

その長い間、みすぼらしいふうをした父親は、同じ姿で、楽器を弾いていました。自分の弾く音色に、ききとれているのか、それとも子供の唄にききとれているのか、うつむきかげんに頭をかしげていました。やがて、いくつかの唄がすむと、少年は自分のかぶっている帽子を脱って、それを持って、立っている人々の前をまわりました。すると、なかには帽子の中に銭をいれてやるものもあったが、少年が、その前にこぬうちに、さっさといってしまうものもありました。

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