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TORENDIA

春さきの古物店

本文約3,900字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

春の陽気が漂う古道具屋の軒先で、役目を終えた張り板、机、乳母車が語り合う。乳母車はかつての美しい風景を懐かしみ、傷だらけの机はかつての持ち主との華やかな暮らしを回想する。持ち主の都合で不自由な姿になりながらも、運命を受け入れつつ春を待つ彼らは、次に客が店を訪れた際、忘れられていた古いひな人形が売れていく様子を目の当たりにし、それぞれの行く末や運命の不思議さに思いを巡らせる。

小川未明

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🎧 春さきの古物店 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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広やかな通りには、日の光が暖かそうにあたっていました。この道に面して、両側には、いろいろの店が並んでいました。ちょうどその四つ辻のところに、一軒の古道具をあきなっている店がありました。そこに、各種の道具類が置かれてある有り様は、さながら、みんなは、いままで働いていたけれど、不用になったので、しばらく骨休みをしているというようなようすでありました。

どんなものが、そこにあったかというのに、まず壁ぎわには、張り板が立てかけられてあり、その下のところに、乳母車が置いてあり、その横に机があり、その他、火ばち・針箱・瓶というように、いろいろな道具類が並べられてありました。

しかし、張り板と乳母車と机とが、いちばんたがいに距離が近かったものだから、話もし、また親しくもしていました。彼らは、このごろは仕事もないし、ただ空想にふけったり、昔のことを思い出したりしているよりほかはなかったのであります。

そのなかでも乳母車は、ちょうど腰の曲がったおばあさんのように、愚痴ばかりいっているのでした。

「まだ、あなたは、その年でもないのに、なぜそう愚痴ばかりおっしゃるのですか。また、これから世の中へ出て、どんなおもしろいめをしないともかぎりますまいに……。」と、机はよく、乳母車に向かっていったことがあります。

すると、青いペンキのところどころはげ落ちた乳母車は、急に、元気づいた調子になって、

「ほんとうに考えればそうなんですよ。けれど、こうして、じっとしていますと、つい気がめいりまして、しかたがないもんですから……。」と、乳母車は答えました。

「ああ、もうじき春がくるよ。そうすれば、おれたちは、きっとおもしろいことがあるだろう。そう長いことでもあるまい……。」と、張り板が、身柄相応な大きな声を出して、口をいれました。

今日も、乳母車は、日のあたたかそうにあたって、黄色なほこりが、人間の歩くげたのさきから、また荷車のわだちの後から起こるのを見ていましたが、いつしか、いつものごとく訴えるような調子で、

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