町の天使
本文約4,100字 ・ 読了時間 約9分
あらすじ(AIが作成しました)
菓子屋の看板に飾られた天使に親しみを抱く少年Sは、病気で寝込む日々の中、嵐の夜に空を飛ぶ天使の幻を見る。やがて天使に誘われ、背に乗って美しい島の上空を旅する幻想的な体験をする。病が癒え、再び学校へ通えるようになったある日、店から天使がいなくなったことを知る。少年は天使が空へ帰ったのだと感じ、雪道で赤い帽子の落とし物を見つけるまでの一連の不思議な経験を描く。
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Sという少年がありました。
毎日、学校へゆくときも、帰るときも、町の角にあった、菓子屋の前を通りました。その店はきれいに飾ってあって、ガラス戸がはまっていて、外の看板の上には、翼を拡げたかわいらしい天使がとまって、その下を通る人々をながめていたのであります。
少年は、すこし、時間のおくれたときは、急いで、夢中でその前を過ぎてしまいましたけれど、そうでないときは、よくぼんやりと立ち止まって、毎日のように見る天使を、飽かずに仰いでいることがありました。
なぜなら、その天使は、あちらの雲切れのした、北の方の青い空から飛んできて、ここにとまったようにも思われたからでした。少年には、それほど、あちらの遠い空が、なんとなくなつかしかったのであります。そして、その天使と青い空とを結びつけて考えると、美しい、また愉快ないろいろな空想が、ひとりでに、わいてきたからであります。
「おまえは、いつ、あのあちらの空へ帰ってゆくの?」と、小さい声でいったりなどしました。しかし天使は、ただこれを聞いても笑っているばかりでした。
雨の降る日も、天使は、そこにぬれながらじっとしていました。また、霧の降った日も……。けれど、少年は、夜になって、大空がぬぐわれたように星晴れがして、寒い風が吹く真夜中には、きっと、天使が自由に、あの翼をふるって、大空を飛びまわるのであろうと思いました。けれど、人は、だれもそれを知らない。そして、天使は、いつもじっとしているとばかり思っているのだと考えました。
「僕は、おまえが、夜になって、だれも人間が見ていないときに、空を飛びまわるのを知っているのだよ。」と、少年は、天使に向かっていいました。
こういっても、天使は、ただ黙って笑っているばかりでした。
S少年は、病気にかかりました。