窓の下を通った男
本文約4,400字 ・ 読了時間 約9分
あらすじ(AIが作成しました)
町へ出る乞食の老人は、道すがらある家の窓辺で親切な女と出会う。女は老人の身の上に同情を寄せ、困窮する彼に金銭を恵み続ける。やがて家が空き家となり二人は離れ離れになるが、数年後、旅先の街道で老人は偶然あの女の面影を持つ若い女性を乗せた汽車と遭遇する。老人は奇跡のような再会に驚きつつも、その人々の未来の幸福を心から願い、再びあてのないさすらいの道を歩み始める。
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一 毎日のように、村の方から、町へ出ていく乞食がありました。女房もなければ、また子供もない、まったくひとりぽっちの、人間のように思われたのであります。
その男は、もういいかげんに年をとっていましたから、働こうとしても働けず、どうにもすることができなかった、果てのことと思われました。
町へいけば、そこにはたくさんの人間が住んでいるから、中には、自分の身の上に同情を寄せてくれる人もあろうと思って、男は、こうして、毎日のように、田舎道を歩いてやってきたのです。
しかし、だれも、その男が思っているように、歩いているのをとどまって、男の身の上話を聞いて、同情を寄せてくれるような人はありませんでした。なぜなら、みんなは自分たちのこと考えているので、頭の中がいっぱいだからでした。まれには、その男のようすを見て、気の毒に思って財布からお金を出して、ほんの志ばかりでもやっていく人がないことはなかったけれど、それすら、日によっては、まったくないこともありました。男は、空腹を抱えながら、町の中をさまよわなければなりませんでした。
美しい品物を、いっぱい並べた店の前や、おいしそうな匂いのする料理店の前を通ったときに、男は、どんなに世の中を味けなく感じたでしょう。彼はしかたなく、疲れた足を引きずって、田舎道を歩いて、さびしい、自分の小屋のある、村の方へ帰っていくのでした。
ここにその途中のところで、道ばたに一軒の家がありました。そう大きな家ではなかったが、さっぱりとして、多分役人かなにかの住んでいる家のように思われました。この道をいく人々は、ちょうど、その窓の下を通るようになっていたのであります。
ある日のこと、男は、その窓の下に立って、上を仰ぎながら、あわれみを乞うたのでありました。どうせ、家の内からは返答がないだろうと思いました。なぜなら、町では、あのように、顔を見合わせて、手を合わせて頼んでも、知らぬふうをしていき、また振り向こうともしないものを、窓の下から、しかも外の往来の上で頼んでも、なんの役にも立つものでないと考えられたからです。