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TORENDIA

奪われてなるものか

本文約590字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

留置場から戻った聴覚を失った青年が、筆談を通じて同志と社会運動の闘いを共有する姿を綴る。奴らのテロにより身体の一部を奪われながらも、屈することなく仲間と共に力を取り戻そうとする労働者たちの強い連帯と、絶望の中でも失われないプロレタリアとしての熱意を詩情豊かに描く作品である。

今野大力

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🎧 奪われてなるものか / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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君はおれの肩を叩いてきいてくれる

君は親しげなまざしでおれを見る

おお君はいつもおれの同志

おれたちの力強い同志

しかしおれには今

君の呼びかけたらしい言葉がきこえない

君はどんなにかあの懐かしい声で

留置場からここへ帰って来たおれに

久方ぶりで語ってくれたであろうに

おれには君の唇の動くのが見えるだけだ

パクパクとただパクパクと忙しげな

静けさ、全く静けさイライラする静けさ

扉の外に佇っていたパイの跫音も聞えない

何と不自由な勝手のちがった静けさか

音響の全く失われたおれの世界

自分の言葉すら聞えず忘れてゆこうとしている

おれは君と筆談だ、君は書く

――おれたちは来る六月十九日の文化連盟の

拡大中央協議会を攻撃の中に開催すべく闘っている。

よし君の言うのはわかる

――おれの耳を奪ったのはあいつ××だ

おれは奴らのテロで耳を奪われたが

××は腕を折られた、足腰も立てなくなってる。

――そうだ奴らはおれたちの側の耳を奪い

手足までも奪ってしまおうとしているのだ

おれたちはそれを奪い返そう

引ったくってやろう

奪われてなるものか

それが後に残った者達の重大な仕事だ。

おれは耳を奪われたしかし

君の文字が伝えてくれるおれたちプロレタリアの側の熱意が

こんなにハッキリわかるのが実にうれしい

おれには何時知らず熱い涙が目尻を流れていた

――おお おれたちの同志しっかり!

おれもやるぞ!

(一九三二年六月作『文学新聞』同年七月十五日付に発表)

完

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