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TORENDIA

義男さん

本文約540字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

佐藤義男は、同僚に対しておとなしく高ぶらない態度で接し、暇さえあれば読書にふけり、自らの書く文字を謙虚に省みる詩人であり歌人であった。本作は、著者が親しい友であった義男との交流を回想する。六月の石切山への旅や、共に過ごした日々を振り返りながら、穏やかな人柄や言葉少なな対話を綴る。通信書記補として任官するも、志半ばでこの世を去った友への追憶と深い悲しみを、静かな追悼の詩として描き出す。

今野大力

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🎧 義男さん / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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義男さんよ

なぜそんなに考えてるの

一生懸命だね

何を読んでいるの……

ああそうか「死線を越えて」か

おもしろいかね

いえなあに借りて来て

読んでいるんですよ

此頃は歌はどうです

沢山書いているでしょう

いえなあに駄目ですよ

さっぱり此頃は

書けませんし出来ないし

わたしももうよしているし

ああそう言われた義男さんが

終に亡くなられた

私と同じ局にいても

いつもおとなしく

少しも高ぶらない君が

いつもこっそり本を読んで

暇などは出さなかった

文字は殊に注意していた

自分の書くことは

どんなに美しくとも

いつもきたないって

手紙のはしに書きそえた

りりー取りの六月十一日

あれがほんとの別れの旅か

淋しくも二人一処に

写真機を持って

行って来たその日

多くは言わない義男さん

ほころびの詩集を出して

あの山の斜えに座して

読んで見た時の思いよ

石切山を指して

共に語りし義男さん

ああ今は亡き人

帰り路は暗かった

汽車を降りて

雨上りの灯の街の

小石路を歩んだ時

それがほんとの別れの旅か

情あるうるわしの人の

死は殊に美しい

義男さんはそうであった

通信書記補の任官になっても

一度も勤めずに

ただ遺牌の文字となり

死なれた事のかなしさよ

詩人であり歌人であり

私の親しい友であり

やさしいおとなしい人であった

佐藤義男さん

七月二十七日車の上で

終になくなられて

しまったのだ

ああ私はかなしい

完

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