人間が、天国のようすを知りたいと思うように、天使の子供らはどうかして、下界の人間は、どんなような生活をしているか知りたいと思うのであります。
人間は、天国へいってみることはできませんが、天使は、人間の世界へ、降りてくることはできるのでありました。
「お母さま、どうぞ、わたしを一度下界へやってくださいまし。」
天使の子供は、母親に頼んだのであります。けれど、お母さまは、容易にそれを、お許しになりませんでした。
なぜなら、人間は、天使より野蛮であったからです。そして、我が子の身の上に、どんなあやまちがないともかぎらないからでありました。
「どうぞ、お母さま、わたしを一度下界へやってくださいまし。」と、幾度となく、その小さな天使の一人は、お母さまに頼みました。
毎夜のように、地球は、美しく、紫色に空間に輝いていました。そして、その地球には天使と同じような姿をした人間が住んで、いろいろな、それは、天使たちには、ちょっと想像のつかない生活をしていると、聞いたからでありました。
「それほどまでに、下界へいってみたいなら、やってあげないこともないが、しかし、一度いったなら、三年は、辛抱してこの天国へ帰ってきてはなりません。もし、その決心がついたなら、やってあげましょう……。」と、お母さまはいわれました。
美しい天使は、しばらく考えていました。そして、ついに決心をいたしました。
「三年の間、わたしは下界にいって、辛抱をいたします。そして、いろいろのものを見たり、また、聞いたりしてきます。」と答えました。
天国から、下界に達する道はいくつかありました。赤い船に乗って、雲の間や、波の間を分けてから、怖ろしい旋風に、体をまかせて二日二晩も長い旅をつづけてから、ようやく、下界の海の上に静かに、降りることも、その一つであれば、また、体を雲と化したり、鳥と化したり、露と化したりして、下界の山の上や、とがった建物の屋根のいただきや、野原などに降りることもできたのであります。