月夜とめがね
本文約3,700字 ・ 読了時間 約8分
あらすじ(AIが作成しました)
月夜の晩、町はずれに一人で住むおばあさんの元に、めがね売りが現れる。買っためがねをかけて手元がはっきりと見えるようになったおばあさんの元へ、今度は指を負傷した美しい少女が助けを求めて訪れる。おばあさんは手当てをしようと再びめがねをかけるが、その瞬間、目の前の少女が胡蝶の姿へと変わるのを目撃する。穏やかな月夜に起きた不思議な出来事と、おばあさんの優しい眼差しを描く。
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町も、野も、いたるところ、緑の葉につつまれているころでありました。
おだやかな、月のいい晩のことであります。しずかな町のはずれにおばあさんは住んでいましたが、おばあさんは、ただひとり、窓の下にすわって、針しごとをしていました。
ランプの火が、あたりを平和に照らしていました。おばあさんは、もういい年でありましたから、目がかすんで、針のめどによく糸が通らないので、ランプの火に、いくたびも、すかしてながめたり、また、しわのよった指さきで、ほそい糸をよったりしていました。
月の光は、うす青く、この世界を照らしていました。なまあたたかな水の中に、木立も、家も、丘も、みんなひたされたようであります。おばあさんは、こうしてしごとをしながら、自分のわかいじぶんのことや、また、遠方のしんせきのことや、はなれてくらしている孫娘のことなどを、空想していたのであります。
目ざまし時計の音が、カタ、コト、カタ、コトとたなの上できざんでいる音がするばかりで、あたりはしんとしずまっていました。ときどき町の人通りのたくさんな、にぎやかな巷の方から、なにか物売りの声や、また、汽車の行く音のような、かすかなとどろきがきこえてくるばかりであります。
おばあさんは、いま自分はどこにどうしているのかすら、思いだせないように、ぼんやりとして、ゆめをみるようにおだやかな気持ですわっていました。
このとき、外の戸をコト、コトたたく音がしました。おばあさんは、だいぶ遠くなった耳を、その音のする方にかたむけました。いまじぶん、だれもたずねてくるはずがないからです。きっとこれは、風の音だろうと思いました。風は、こうして、あてもなく野原や、町を通るのであります。
すると、こんどは、すぐ窓の下に、小さな足音がしました。おばあさんは、いつもににず、それをききつけました。
「おばあさん、おばあさん。」と、だれかよぶのであります。
おばあさんは、さいしょは、自分の耳のせいではないかと思いました。そして、手を動かすのをやめていました。
「おばあさん、窓をあけてください。」と、また、だれかいいました。