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TORENDIA

若鮎の気品を食う

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

若鮎の姿のよさ、芳醇な香気、気品の高さについて綴る。丹波の秀山や和知川、酒匂川産の若鮎を賞味する際、川を離れてからの鮮度管理が味を左右する点を強調する。頭から尾まで余さず食すことで、わたの苦味に宿る格別の風韻や、川瀬の激しい場所に棲む魚の真価を感じ取れると説く。さらに塩焼きや洗いといった調理法を通じ、他の調味料で味を殺さず、鮎本来の味を生一本に楽しむべき美食の心得を語る。

北大路魯山人

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🎧 若鮎の気品を食う / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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ぜいたくにと、ひと口に言っても、上には上、下には下の段々がある。若鮎を賞味できる人というのは上の上に属する。丹波の秀山、和知川などの若鮎と来てはたまらない。

第一姿のよさに魅せられる。すばらしい香気に鼻がうごめく。呑口は一杯やらずには納まらない。頭から尾先まで二寸から二寸五分というくらいの大きさが若鮎の初物で、その小味はたとえようもない。若鮎には気品の高さというものがある。その気品の高さは出盛り七、八寸――一人前の鮎に較べて問題でないまでに調子の高さがある。口ぜいたくを極めた後に初めてわかる味である。

金串の極小に刺して、塩焼きにするのはふつうのことで、これを生のまま赤出しに入れて、若鮎の味噌汁をつくる。温室の蓼を添えてもよし、皮山椒をひと粒入れるもよい。

鮎は頭から尾先まで余さず、ひと口かふた口に食う。鮎のわたの苦味は、また格別の風韻が口に美しく残る。流れのにぶい川の鮎は、肉がでぶでぶしていて不味い。川瀬のはげしい水の美しいところにいるものでなくては、ほんとうの鮎とは言えない。東京近くでは若鮎ならば酒匂川の下流が割合によい。多摩、厚木などのものは、私どもの口に合わない。

若鮎も三寸五分、四寸となると、いよいようれしい姿になって、ひと目見ただけで、矢も楯もたまらず食指は動く。しかし、川の水を離れて十時間以内でなくては、その価値はない。それも充分にいたまぬ手当をしてのことである。十時間以上も経てば、佃煮にでもするほか仕様はあるまい。川を離れて三、四時間以内で食いたいものである。

四寸ぐらいの若鮎を三枚におろし、洗いづくりにして、わさびで、あるいは蓼で舌鼓を打つなどは、時節柄、あまり最高を狙う美食道楽に過ぎるものだ。鮎は同時に同所で釣り上げたものでも、大小が混ざっている。大は発育良好のもの、小は発育不良のものと見てよい。もとより発育良好をよしとする。

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