本文へ移動
TORENDIA

昆布とろの吸い物

本文約830字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

昆布とろの吸い物は、関西で親しまれている簡潔で明瞭な美味さを持つ料理である。上等な昆布の選び方、かつおぶしで取るだし、薄口醤油の活用といった基本技術を解説し、料理として上等に仕上げるための工夫を綴る。特にとろろ昆布にかつおぶしのだしを注ぐ際、ねぎを添えることによる風味の変化を説き、日常の惣菜をより美味しく楽しむための調理の心得と具体的な手順をまとめる。

北大路魯山人

速度
🎧 昆布とろの吸い物 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

関西では「昆布とろの椀」で通ずるようになっているので、ここではそうしておこう。これくらい簡単で、明瞭な美味さを感ずるものは、ほかに類がないかも知れない。

関西人はことに昆布を食いつけているので味が分り、充分に賞味できることから、多くの人が賞味しているようである。ただここでは昆布がよくないといけないのであって、東京では昆布をあまり知らないところから、とろろ昆布、もずくがあるけれども、粗末にするものが多い。いい昆布で、削って肉のないようなのがよいのだが、東京では特殊店に行かないとない。しかし、関西では自由に手に入る。上等品は白く、やわらかく、ふうわりとしていて、真っ白く削られたものがよろしい。日常の惣菜には黒いのでも美味いには美味いが、品がわるい。

なんにしても昆布だけの吸いものだから、昆布を中心にして、昆布の選択をするほど効果がある。また昆布の吸いものゆえに、そのだしはかつおぶしだけでよろしい。かつおぶしと言ってもよしあしがあるから、かつおぶし屋に行って、よく乾燥して高いものを買ったらよい。それだけで立派な吸いものができる。

ここでも薄口醤油を是非とも使って欲しい。東京のものより半額ほど安いのだから、手に入れて欲しいものである。

さて昆布とろをぞんざいにやる時だったら、椀の中にとろろ昆布を入れ、化学調味料でも少し入れ、醤油を加え、それに熱湯をさすだけでできるのであるが、それでは荒っぽいぞんざいな間に合わせ仕事で、料理らしく上等にするには、是非かつおぶしのだしを取り、それに薄口醤油を入れ、ふつうの汁よりちょっと水っぽくして、それを椀の中のとろろ昆布の上から注げばよろしい。ただし、それには条件がある。この中にねぎの微塵に刻んだのを入れるのと入れないのとでは、味が非常に違うということである。入れないと、なんだか物足りなくて、味の上に大いなる劣りがある。今までねぎを入れてやったことのない方があったら、是非お試し願いたいものである。

(昭和八年)

完

北大路魯山人の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本