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TORENDIA

薬売りの少年

本文約4,400字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

荷物を背負い各地を旅する薬売りの少年は、春の訪れとともに村々を巡り、医者のいない場所で薬を置いていく行商をしていた。ある村で咳に苦しむ少年と出会い薬を届けた後、崖の上に住むという風変わりな先生の家を訪れる。子供たちに慕われながらも頑固な態度を見せる先生と、寂しさを抱えながらもラジオや鳥と暮らすその生活に触れ、少年は独自の交流を深めていく。旅を続ける少年の姿と、人々の情けを描く物語。

小川未明

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🎧 薬売りの少年 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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荷物を背中に負って、薬売りの少年は、今日も知らぬ他国の道を歩いていました。北の町から出た行商群の一人であったのです。

霜解けのした道は、ぬかるみのところもあるが、もう日の光に乾いて、陽炎の上っているところもありました。村はずれに土手があって、大きな木が立っていました。かさのように枝を空へ拡げていました。

「なんの木だろうな。」

少年は、よくこうした景色を見るのです。ゆくところ、どこにも同じような村があり、人が住んで、笑ったり、怒ったりしていると思うと、なんとなくこのあたりの風景を見てもなつかしいのでした。そしてここにはもう春がきていて、木の下には、青い草が芽ぐみ、紫色のすみれの花さえ咲いているのが、目の中に入ったのです。

少年は思わず、故郷の方を振り返りました。青空遠く雲は流れていて、もとよりその方角すらたしかでなかったが、曇り日がつづき、冷たい雪が降っていることと思われました。彼は、青草の上へ腰をおろそうとしたが、そばに小さな茶店があるのに気づいたので、さっそく入って腰掛けへ休みました。

「いらっしゃいまし。」と、おかみさんが、愛想よくお茶を注いでくれました。

「この村へ、薬屋がやってきますか。」と、少年は、たずねたのであります。

「あなたは、お薬屋さんですね?」と、おかみさんは、少年を見ました。

「そうです。どんな薬でも持っています。今年置いてゆきまして、来年またまいりましたときに、お使いになった薬のお代をいただくのですが、どうか、ここへも一つ置かしてくださいませんか。」といって、薬売りの少年は、頼みました。少年は、おかみさんが、どういうだろうかと心配しながら返答を待ちました。

「よろしゅうございますよ。このへんは、町へ出るには遠いし、お医者さまもいない、まことに不便なところですから、万一の場合に困ってしまいます。私の家ばかりでなく、きっと喜ぶ家がありますから、このへんをお歩きになってごらんなさい。」と、おかみさんは、しんせつにいってくれました。少年は、いいところへきたと思って、たいそう喜びました。

「こちらは、暖かでいいところでございますね。」

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