本文へ移動
TORENDIA

真昼のお化け

本文約7,800字 ・ 読了時間 約16分

あらすじ(AIが作成しました)

神社の境内で遊ぶ光一は、友人からえびの飼育や工作の話を聞き、自然への好奇心を抱く。その後、原っぱで不思議なえびを拾い、さらには「おたま」を売る老人と出会う。周囲に信じてもらえない出来事を経験する中で、光一は自分だけが知る世界の神秘に触れ、この世には他者と共有できない不思議な体験が存在することを深く心に刻む。

小川未明

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 10

上

光一は、かぶとむしを捕ろうと思って、長いさおを持って、神社の境内にある、かしわの木の下へいってみました。けれど、もうだれか捕ってしまったのか、それとも、どこへか飛んでいっていないのか、ただ大きなすずめばちだけが二、三びき前後を警戒しながら、幹から流れ出る汁へ止まろうとしていました。しかたなく、鳥居のところまでもどってきて、ぼんやりとして立っていると、せみの声がうるさいほど、雨の降るように頭の上からきこえてくるのでした。そのとき、勇ちゃんが、あちらから駆けてきました。

「なにをしているのだい?」

「なんにもしていない。」

光一は、さびしく思っていたところで、お友だちをばうれしそうに迎えたのです。

勇吉は、並んで鳥居によりかかるとすぐに、問題を出して、

「長い足で歩いて、平たい足で泳いで、体を曲げて後ずさりするもの、なあんだ……。」と、光一に向かってききました。

「考えもの?」

「うううん、光ちゃんの知っているものだよ。」と、勇吉は笑いました。

「なんだろうな。」

光一は、しきりに考えていました。

かぶとむしではないし……。

「ああ、わかった。ばっただろう?」と、大きな声で答えました。

勇吉は、ちょっと目を光らして、頭をかしげたが、

「ちがうよ、ばったは、泳ぎはしないよ。」と、朗らかに、笑ったのです。

「僕、わからないから教えて。」

とうとう、光一は、降参しました。

「えびさ。きょう僕、学校で理料の時間にならったんだよ。光ちゃんもえびはよく知っているだろう。けれど、そう聞くと不思議と思わない? 僕、えびをおもしろいと思ったんだ。かぶとむしなんかより、えびのほうがずっとおもしろいと思ったんだよ。あした、川へびんどを持っていって、小さなえびを捕ってきて、びんの中へ入れてながめるのだ。」と、勇吉は、おもしろいことを発見したように、いいました。

小川未明の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本