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TORENDIA

幼少の思ひ出

本文約5,400字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

ロンドン滞在中のエピソードをきっかけに、著者が自身の幼少時代を回顧する随筆。厳格な祖母による折檻や独り子ではない大家族での生活といった家庭の複雑な事情、さらに『八犬伝』に夢中になった読書体験などを綴る。大人になった今、当時の環境を振り返りつつ、子供の成長と教育の在り方について考察する。

正宗白鳥

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🎧 幼少の思ひ出 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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今から二十年あまりも前の事である。ロンドンからエデインボロウに向ひ、グラスゴーだのリバプールだのを経て、ロンドンへ帰るまでに、沙翁の故郷であつたストラツトフオード・オン・エボンへ立ち寄ることにした。途中の田舎町で、汽車の乗り換へを間違へたりして、まごまごしてゐた。それで、田舎の停車場にゐた学校帰りらしい数人の女学生に、ストラツトフオードへ行くには、どの汽車に乗つたらいゝかと訊くと、「それは今度此処を出る汽車に乗つて、一度乗り換へねばならぬ。」と、一人の女学生が答へて、「何とかさん。」と、仲間の一人を呼んで、「あなたは其方へ帰るのだから、この方に乗り換へを教へて上げなさい。」と云つたやうであつた。その女学生は同意したらしかつた。それで、そちら行きの汽車が来ると、私達夫妻を促してその汽車に乗らせて、自分も乗ることは乗つたが、私達の隣りの車室へ入つて行つた。そして、乗り換へ場所へ来ると、早くプラツトホームへ下りて、私達の下りて行くのを待つて、ストラツトフオード行の汽車を教へて、左様ならの挨拶をして別れた。

これだけの事でも、私達には外国旅行の面白さが感ぜられたのであつた。かの少女は、東洋の黄色人種と座席を共にするのを嫌つてゐたのであつた。極りを悪がつてゐたのであつた。

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