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TORENDIA

範疇の発生学

本文約3,400字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

範疇を単なる固定的な論理の形式ではなく、歴史の過程を経て発展・変化する思惟の道具として捉える。範疇の系統的な発生を無視し、異なる時代や文化の範疇を翻訳や解釈を経ずに直接同一視したり、共軛化を拒絶したりする態度は、時代錯誤やファシズムなどの反動へと繋がる。本作は、範疇の歴史的性格を科学的に解明することで、これら反動思想の理論的基盤を批判的に論じる。

戸坂潤

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🎧 範疇の発生学 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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我国の暫く前までの学界情勢では、カント流の範疇が範疇の代表者と考えられていた。それはアリストテレスの判断表から、そしてアリストテレスの判断表は文法から、引きだされたものだといわれている。とに角カントはそれを形而上学的(哲学的)に演繹したものである。だから範疇はここでは先験的に十二という数に限定されて了っている。存在に関する可能的、経験の論理的予件、というような固定した条件を範疇が意味した限りそうなるのが当然であった。だが範疇は元来、アリストテレス自身によれば、様々な言表の根本的な型であった。その数はなる程略々十個程数えられているが、それを十個に限らなければならない理由は必ずしも無かったのである。範疇が言葉のもっとも基本的な理論的機能を意味した限り、そして言葉が人間の生存の諸条件と共に移動する限り、それを絶対的に固定して了うことの出来ないのが当然である。

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一体言葉は、それが客観的に通用するためには一応固定されねばならないが、しかしそれが常に変化し発展して行く存在をいい表わすためには絶えず変更されて行かねばならない。そういう矛盾した制約を持っている言葉は、系統的な変化を持つものなのである。(ここに言語学の科学的地盤がある。)範疇もまたそうであって、単にそれが一方において固定した結節点であると同時に他方において変化の飛躍点であるばかりではなく、それ自身が固定していながら次第にその形を変えて行かねばならない性質を持っている。丁度それは氷河の流れ方によく似ている。存在という岩壁の溝に篏められながら、範疇という氷塊は、必然の圧力と重力とによって岩壁をこすりながら歴史の床を下って行くのである。範疇は常に歴史の所産であり、系統的な発生物である。それは発見又は発明され、そして使い減らされて行く所の、思惟の道具に外ならない。(ここに範疇論の科学的地盤がある。)

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