TRENDIA CLASSIC

学界の純粋支持者として

戸坂潤

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学界というものをごく狭く理解して、研究室や研究所に直接関係がある世界のことだとすると、私は今日では全く学界の外の人である。私は研究所の嘱託でも研究員でもなければ、大学の教室の助手でも助教授でもない。私は所長や教授会の御気嫌をうかがったり、主任教授の命じた結果を出すような研究をやったり、論文を捏ね上げて学位を取ったり、する必要はない。従って誰が自分より先に教授になろうと又博士になろうと一向心配ではない。そういう点から、私は少くとも学界に対する不平などはないのである。ただあまりにクダラない男が尤もらしい顔をして大学の教師などにおさまっているのを見ると、一寸悪戯がしてやって見たくなる位いの関心なのである。

之は研究室をめぐる人間界という意味での学界のことであるが、併し研究所や大学にはこの人的な学界と関係して、沢山の良い又珍しい本や資料があるのは勿論だ。この書物や資料の貯蔵を中心として学界というものを考えて見ると、今度は相手が人間ではなくて書類なので、別に不平の起きる余地はない代りに、甚だ食指の動くものがあるのである。従って之を占有し又は自由に利用し得るアカデミシャンに対しては、正直に云って、羨しい気持を抑えることが出来ない。そこでもしこのアカデミシャンが、判だの鍵だの紹介状だの其他一切の権威の象徴を用いて、私を社会的にこの宝庫に近づけない結果を招くとなると、この羨しさは忽ち抑えがたい不平に転化せざるを得ない。

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