イデオロギー概論
本文約159,300字 ・ 読了時間 約319分
あらすじ(AIが作成しました)
イデオロギーという概念を、単なる流行や軽視されるべき問題ではなく、広範かつ普遍的な原理的問題として論じる。著者は社会科学的観点からイデオロギーを事象として取り扱うための基本的な計画を提示する。インテリゲンチャにとって文化や意識が重要である現状を踏まえ、観念や意識の哲学史を振り返りつつ、イデオロギーの問題を根本問題として捉え、科学的労作のための入門書として体系化したものである。
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序
私は二年あまり前に、『イデオロギーの論理学』を出版したが、今度の書物は全く、それの具体化と新しい領域への展開なのである。が、そればかりでなく、又その敷衍と平易化とでもあることを願っている。
イデオロギーの問題が、一般社会から云っても又階級的に云っても、至極重大な客観的な意味を有っていることを、今更口にする必要はないであろう。併しこの問題は世間の人々が想像しているように、それ程決って了った問題でもなければ、又充分に検討し尽されつつある問題だとさえも云えない。それは甚だ多くの未知のものを吾々に約束しているように見える。私はそこで、事物をイデオロギー論的に取り扱うための基本的な計画を立てて見ることにした。それがこの書物である。
だから私にとって、イデオロギーの問題は単に一つの顕著な大事な問題というだけではなく、可なりの広範さと普遍さとを有った原理的な問題として現われる。この書物は単に読者にとっての手引きであるばかりでなく、又著者自身の科学的労作にとっての入門書なのである。それで今の場合、イデオロギーに関する歴史的叙述に立ち入る余裕がなかったのは遺憾である。
第二部の批判的な各章は以前発表したものを元にし、之を短かくし且つ訂正したものである。併しこの各章が、単なる批判ではなくて、実は夫々一定の公式を導き出すためのものだという点を、注意して欲しい。
一九三二・一〇
東京 戸坂潤 [#改ページ]
第一部「社会科学」的イデオロギー論の綱要
第一章 イデオロギーの問題
一
云うまでもなくそれ自身としてはブルジョアジーのものである処の、わが国に於ける文壇や論壇、又学壇をさえ一貫して、マルクス主義的・社会科学的・認識が今日では可なりよく普及していると見て好い。一部分の、無意識的にか又は故意にか、敢えて迷蒙に止まろうと欲しているとしか考えられない諸反動分子は例外として、わが国のインテリゲンチャ層は大勢から云って、マルクス主義的・社会科学的・諸範疇を夫々の程度に承認し、而も之を相当日常化して使っているだろう。イデオロギーという言葉乃至概念も亦例外ではない。