TRENDIA CLASSIC
思想動員論
戸坂潤
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準戦時体制、或いは寧ろ戦時的体制の下に、事実上今日各部面の動員が行なわれている。軍事的動員を中心として、経済的、財政的動員、政治的動員、社会的動員、等々が行なわれつつある。戦時的体制や準戦体制というよりも、寧ろ動員体制と呼んだ方が適当であるかも知れない。北支事変が、準戦時体制乃至戦時体制をばこの動員体制にまで推進させたことは云うまでもない。かくて言論界に於ても動員令が下されたと見ることが出来る。独り言論動員ばかりでなく、一般に思想動員、文化動員が行なわれ始めたと見ねばならぬ現状である。
この思想動員、文化動員、又言論動員は、夫がなる程一種の動員と見られる限り、何と云っても臨時体制という性質を免れないように見える。動員体制とはつまり戦時体制の極致であるわけだから、今日の日本の事実に於ける戦時体制が、半永久的なものでなければならぬという要求から、臨時的に見える戦時体制という言葉の代りに、ワザワザ準戦時体制という言葉で呼ばれているのかも知れぬ。それはとに角、動員体制と云う限り、半永久的な安定状態を指すには不適当だ。勿論今日の日本の準戦時体制・戦時体制・動員体制・は半永久的なものでなければならぬと、この体制の主張者達は考えているのが事実だが、又他面の事実として、半永久的に動員体制にあるなどということは、何と強弁しようと、社会の不健康を意味する他あるまい。一般に動員とは、何と云っても一時的な現象を指さねばならぬ約束である。
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