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TORENDIA

伊豆の伊東へ

本文約500字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

伊豆の温泉地・伊東へ向かう道中の険しい山道や、眺望絶佳の風景を描く。海には大島や初島が浮かび、温暖な気候のもと植物が豊かに育つ土地である。病児を抱える旅人である筆者が、心細さを覚えつつも知人の出迎えによって安堵する様子や、療養への切実な願い、そして自身の困窮した境遇に対する複雑な心境を綴る。八月初旬の伊東という見知らぬ土地での滞在を通じて、自己の再生と病と向き合う姿を叙情的に浮かび上がらせる。

今野大力

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🎧 伊豆の伊東へ / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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地図を見ればここは伊豆

伊豆の温泉、伊東の町

熱海より五里余

汽車もなければ

そびえ立つ岩肌を穿ち堀りけずり

辛くも自動車の往来する

これこそ羊腸の道

怪異の岩礁出でて

緑の松腰を折れば

そこは眺望絶佳といわれて

ラムネ、レモンを売る

腰掛茶屋も並びあり

異人の女一人遠き伊豆の山肌を写しており

伊豆の山の美しさは

われをして故郷にある貧しけれど情みつる

母の心情のうるおいを憶しめ

病児をいたわるはここぞと思わしむ

陽高ければ海青く

海の上はるか彼方に煙見ゆるは

伊豆の大島ぞと同じく行く人の語る折

さて我は旅人なりと感ずるに

胸にせまる哀傷せつなく

網代をすぎ、伊東にいたるを心待つ

八月初旬、蜜柑 真青に

さるすべり残りの花を咲かせ

ざくろは今年南方の風を恋て

多分に実らす

竹林に七夕の竿を伐る人わけ入る

ここは温暖の国、温泉の街

一人見知らぬ町の路上に降り立てば

間もなく兼て迎える人あり、心強し

ここ三面は山、一面は海

海上に初島と呼ぶ共産島浮かぶ

伊東よ、病児を養い

再び、われをたたしめよ

地図を見れば、ここは伊豆

伊東の町、伊豆の温泉

悔いなき旅人と信ずれども

もとより貧しき者を

尚も貧しく困窮へと導く勿れ!

我病児は遂に癒えざるべし。

一九二八年夏伊東にて

完

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