魔術師
本文約137,600字 ・ 読了時間 約276分
あらすじ(AIが作成しました)
明智小五郎は、変幻自在の魔術を操り、奇怪な犯罪を次々と引き起こす正体不明の強敵に立ち向かう。事件は名探偵が休息のために訪れた湖畔から始まり、宝石商玉村家の令嬢妙子やその周囲の人物を巻き込みながら、心理的かつ物理的な欺瞞に満ちた争闘へと発展する。推理一点張りの機械ではない明智は、犯人の仕掛ける大魔術の数々に翻弄され、時に命の危険に晒されながらも、死と紙一重の瀬戸際でこの巨大な悪に挑んでいく。
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作者の言葉
わが明智小五郎は、遂に彼の生涯での最大強敵に相対した。ここに『蜘蛛男』の理智を越えて変幻自在なる魔術がある。魔術師は看客の目の前で生きた女を胴切りにしたり、箱詰めの小女を剣の芋刺しにしたり、彼女を殺害して鮮血したたる生首を転がして見せたり、或は立所に人を眠らせ、自由自在の暗示を与え、或は他人の心中持物を看破するなど、あらゆる奇怪事を行うことが出来る。
兇賊がこれらの怪技の妙奥を会得していた場合を想像せよ。流石の名探偵明智小五郎もこの魔術師の心理的或は物理的欺瞞には、いたく悩まされねばならなかった。
魔術兇賊とは何者であるか。それがどんなに意外な人物であるか。又彼はそもそも如何なる悪業を企んだのか。そして、明智小五郎はよくこの大敵に打勝つことが出来たか否か。名探偵と魔術師の争闘こそ見ものである。
「講談倶楽部」昭和五年六月号より [#改ページ]
美しき友
新聞紙は毎日の様に新しい犯罪事件を報道する。世人は慣れっこになってしまって、又かという様な顔をして、その一つ毎に、さして驚きもしないけれど、静かに考えて見ると、何と騒々しく、いまわしい世の中であろう。広い東京とは云いながら、三つや四つ、血なまぐさい、震え上る様な犯罪の行われぬ日とてはない。今の世に、十九世紀の昔語りにでもあり相な、貰い子殺しの部落が現存するかと思うと、真実の弟を叩き殺して、つい門前の土中に埋め、その御手伝いをさせたもう一人の弟を狂人に仕立てて、気違い病院に放り込むなど、まるで涙香小史飜案する所の、フランス探偵小説みた様な、奇怪千万な犯罪すら行われているのだ。