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TORENDIA

「悪霊物語」自作解説

本文約780字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

連作形式の幻想怪奇物語の着想過程を綴る。老人形師が人形に生命を吹き込む錬金術師か、あるいは女を監禁する色魔かという疑惑を軸に、妖美な美女とそれに魅了され狂気する小説家の関係を描く。ホフマンやワイルドの作品を念頭に置き、酒場や廃園といった異様な場面設定を通して、魔術師の悪念に翻弄される二人の運命と、人間か人形か判別し難いヒロインの謎を提示する。

江戸川乱歩

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私のつけ句

連作とは連歌俳諧の如きものであろう。第一の発句は余り限定的でない方がよろしい。脇はこれをいかようにも受けとるであろう。第三はまたそれを別の方向に転化するであろう。そして、最後の揚句と最初の発句とは似もつかぬ姿となることもあり得る。

私はこの連作の第一回を、ホフマンの「砂男」や、ワイルドの「ドリアン・グレイ」を連想しながら書いた。これをすなおに引きのばせば、幻想怪奇の物語となる。老人形師は人形に生命を吹きこむ錬金術師であろう。また、モデル女を誘拐し、監禁する色魔であろう。小説家はこの老魔術師の心を知る人である。知りながら、その妖術のとりことなるのである。

彼はその女の、人間とも人形ともつかぬ妖美にうたれ、これを恋するであろう。この女は人間か、それとも老魔術師が造り出した人形か、この疑惑は物語の終りまで解けないであろう。

冷たい滑かな蝋人の肌に惹かれて、小説家は狂気する。老人形師は彼の恋がたきである。その狡猾な術策と戦わねばならぬ。美女は彼を魅惑し、翻弄し、あらゆる痴態をつくすであろう。その幾場面が語られる。

或る時は、むせ返る酒場の喧噪の中に、妖女は透き通るからだを酔いの桃色に染めて嬌笑するであろう。或る時は、廃園の森の奥深く、泉の水中に長いかみの毛を藻となびかせて、もがきたわむれるであろう。真紅のビロウドのベッドを背景としてもよろしい。青空の風船の吊籠の別世界に、詩人と妖女と相抱きながら、下界を嘲笑してもよろしい。しかし、二人のうしろには、たえまなく、老魔術師の黒い影と、狡猾な悪念がつきまとっている。

さて、その『揚句』は美しき死であろうか。小説家はこの世のほかの妖美に酔いしれて、女と折り重なって息絶えるであろう。そして、美女の死体は、人肉ではなくて、永遠に変ることなき、透き通る蝋の肌なのである。

(「講談倶楽部」昭和二十九年九月増刊)

完

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