TRENDIA CLASSIC
鉄塔の怪人
江戸川乱歩
1 / 98
のぞきカラクリ
明智探偵の少年助手、小林芳雄君は、ある夕方、先生のおつかいに出た帰り道、麹町の探偵事務所のちかくの、さびしい町を歩いていました。
麹町には、いまでも焼けあとの、ひろい原っぱがのこっています。かたがわは、草のはえしげった原っぱ、かたがわは、百メートルもつづく長いコンクリートべい。もう、うすぐらくなったその町には、まったく人どおりがありません。気味がわるいほど、しずまりかえっています。
ヒョイと、コンクリートべいのかどをまがると、そこに、みょうなものがありました。車の上に、四角い、大きな箱のようなものがのせてあって、その箱のまえがわに、三センチほどの、小さな丸い穴がよこに五つならんでいるのです。そして、その車のそばに、ひとりの白ひげのじいさんが、立っていました。
頭も白く、口ひげも白く、そのうえ、ながいあごひげが胸までたれ、しわくちゃの顔に、昔はやった、小さな玉のめがねをかけ、そのおくに、ゾウのようなほそい目がひかっています。着ているのは、三十年もまえにつくったような、古いかたの、はでなこうしじまの洋服で、それに、でっかいドタぐつをはいて、腰のうしろで両手をくみ、ニヤニヤ笑いながら立っているのです。
人どおりもない、こんなさびしい町かどで、なにをしているのだろうと、小林君は、おもわず立ちどまって、そのみょうなじいさんの顔をながめました。
「ハハハ……、おいでなすったね。わしは、さっきから、きみのくるのを待っていたんだよ。」
じいさんは、歯のぬけた口を大きくひらいて、顔じゅうを、しわだらけにして笑いました。
「ぼくを、待ってたって? 人ちがいじゃありませんか。ぼくは、おじいさんを見たことがありませんよ。」
小林君が、びっくりして、いいますと、じいさんは、まじめな顔になって、
江戸川乱歩の他の作品
TRENDIA CLASSIC
指環
江戸川乱歩
指環
江戸川乱歩 ・ 約7分
TRENDIA CLASSIC
赤いカブトムシ
江戸川乱歩
赤いカブトムシ
江戸川乱歩
TRENDIA CLASSIC
悪霊物語
江戸川乱歩
悪霊物語
江戸川乱歩
TRENDIA CLASSIC
赤い部屋
江戸川乱歩
赤い部屋
江戸川乱歩
TRENDIA CLASSIC
「悪霊物語」自
作解説
江戸川乱歩
「悪霊物語」自作解説
江戸川乱歩
TRENDIA CLASSIC
悪霊
江戸川乱歩
悪霊
江戸川乱歩
TRENDIA CLASSIC
一枚の切符
江戸川乱歩
一枚の切符
江戸川乱歩
TRENDIA CLASSIC
暗黒星
江戸川乱歩
暗黒星
江戸川乱歩
TRENDIA CLASSIC
偉大なる夢
江戸川乱歩
偉大なる夢
江戸川乱歩
TRENDIA CLASSIC
悪魔の紋章
江戸川乱歩
悪魔の紋章
江戸川乱歩
TRENDIA CLASSIC
一寸法師
江戸川乱歩
一寸法師
江戸川乱歩
TRENDIA CLASSIC
江川蘭子
江戸川乱歩
江川蘭子
江戸川乱歩