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TORENDIA

陸中雑記

本文約9,400字 ・ 読了時間 約19分

あらすじ(AIが作成しました)

陸中地方を巡った柳宗悦が、独自の風俗や工芸を綴る随筆である。御明神村で働く女たちの編笠や背中当といった特色ある装束を詳細に紹介し、その美しさを称える。また、荒屋新町から浄法寺にかけて伝わる伝統的な漆器製作や、村人の生活に根付いた竹細工の歴史と技術を記述する。さらに、衣川の堅実な漆器作りを支える信仰や職人気質を考察し、地方が持つ固有の美意識と工芸の可能性を論じる。

柳宗悦

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御明神の風俗

所は陸中の国である。盛岡から西へ六、七里も行くであろうか。雫石と呼ぶ村に入る。そこから更に進むと間もなく御明神の村に達する。余り訪う人もない所であるが、一度訪うた者には忘れ難い土地となろう。なぜならここに珍らしい風俗が残るからである。女たちが野良に出て働く時の身なりである。京の大原女は世にも名高いが、実はそれよりももっと美しく、もっと特色があり、もっと複雑である。日本の地方に見られる風俗としては真に特筆すべきものと思える。また世界の様々な女の身なりの中に入って、人目を殊に惹くものの一つと思える。なぜこんなにも珍らしく、見事な風俗が、移り変りの激しいこの世に残ったものか。私は何も昔を物語っているのではない。今も用いられる着物について述べているのである。それも年とった者だけが用いるのでは決してない。うら若い女たちが身につける風俗である。ちゃんと一と通りの身なりを整えるのに幾つの品が要るのか、とても数々が入り用なのである。

編笠はまるでフランスの女たちの持ち物のようにさえ見える。草で編んで左右の端がいたくそる。縁を黒のびろうどでとり、それに五色の色糸で美しいかがりをする。頂きはしばしば四つの総で飾られてある。糸かがりが面白いのみか、笠の裏側がまた美しい。色々な布で色々な形の裏をつける。皆綿入で裁縫の手並をここでも見せる。日本の津々浦々には、様々な編笠がある。四国土佐の産で美しい細工のを見かけたが、御明神のはそれにも増して特色がある。

笠だけでもおそらくこの村の名が記憶されるであろうが、それはその風俗のほんの一端である。多くは紺絣の細袖の着物を着、これに股引をはき前掛をかける。時としてこれらのものに刺子を施すのを悦ぶ。

さてこの仕度が整えば日除けの背中当(ひごも)をつける。多くはみごで作り、側を紺の布でとりこれに糸や布で模様をつける。様々あるが多く見るのは扇面である。縁起を祝うのであろう。幅一尺ばかり丈は四尺に及ぼう。背中当としては珍らしい形である。余り他国では見かけない。

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