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TORENDIA

白昼夢

本文約3,700字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

蒸し暑い午後の大通りを歩いていた「私」は、群衆に囲まれて演説をする風采のよい男に出会う。男は妻を殺害した経緯や、死体を蝋細工のようにして薬屋の店先に飾っていることを熱心に語る。見物人や警官が笑い飛ばす中、好奇心から日覆の中を覗いた「私」は、そこに生々しい人間の死骸があることを目の当たりにする。現実と悪夢が交錯するような狂気の光景に衝撃を受けつつ、その場を離れた「私」は当惑しながら歩き出す。

江戸川乱歩

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🎧 白昼夢 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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あれは、白昼の悪夢であったか、それとも現実の出来事であったか。

晩春の生暖い風が、オドロオドロと、火照った頬に感ぜられる、蒸し暑い日の午後であった。

用事があって通ったのか、散歩のみちすがらであったのか、それさえぼんやりとして思い出せぬけれど、私は、ある場末の、見る限り何処までも何処までも、真直に続いている、広い埃っぽい大通りを歩いていた。

洗いざらした単衣物の様に白茶けた商家が、黙って軒を並べていた。三尺のショーウインドウに、埃でだんだら染めにした小学生の運動シャツが下っていたり、碁盤の様に仕切った薄っぺらな木箱の中に、赤や黄や白や茶色などの、砂の様な種物を入れたのが、店一杯に並んでいたり、狭い薄暗い家中が、天井からどこから、自転車のフレームやタイヤで充満していたり、そして、それらの殺風景な家々の間に挟まって、細い格子戸の奥にすすけた御神燈の下った二階家が、そんなに両方から押しつけちゃ厭だわという恰好をして、ボロンボロンと猥褻な三味線の音を洩していたりした。

「アップク、チキリキ、アッパッパア……アッパッパア……」

お下げを埃でお化粧した女の子達が、道の真中に輪を作って歌っていた。アッパッパアアアア……という涙ぐましい旋律が、霞んだ春の空へのんびりと蒸発して行った。

男の子等は繩飛びをして遊んでいた。長い繩の弦が、ねばり強く地を叩いては、空に上った。田舎縞の前をはだけた一人の子が、ピョイピョイと飛んでいた。その光景は、高速度撮影機を使った活動写真の様に、如何にも悠長に見えた。

時々、重い荷馬車がゴロゴロと道路や、家々を震動させて私を追い越した。

ふと私は、行手に当って何かが起っているのを知った。十四五人の大人や子供が、道ばたに不規則な半円を描いて立止っていた。

それらの人々の顔には、皆一種の笑いが浮んでいた。喜劇を見ている人の笑いが浮んでいた。ある者は大口を開いてゲラゲラ笑っていた。

好奇心が、私をそこへ近付かせた。

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