ロバート・ボイル
本文約5,600字 ・ 読了時間 約12分
あらすじ(AIが作成しました)
アイルランドの貴族に生まれたロバート・ボイルは、科学者として実験と観察を重視する姿勢を貫き、近代的な物化学の基礎を築いた。彼は、錬金術的な古い思考から脱却し、自然科学者として物質の性質や元素、混合物と化合物の違いを解明した。また、空気ポンプを用いた真空の実験や、気体の体積と圧力が逆比例する法則の発見などを通じて、科学の進歩に大きく寄与した。本書は、こうした科学的精神で自然の真理を追求した彼の生涯と業績を収める。
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物化学の起り
自然には非常にたくさんの種類の物質があって、それぞれ性質を異にしているのは、誰でも知っている事がらでありますが、それらの物質はいろいろなはたらきによって互に変ってゆくので、それで我々人間は都合のよいものをつくって、さまざまの目的に利用することができるのです。ここに実に奥深い自然の妙味があるので、それですから我々はまずそのような自然のはたらきがどう起るかを研究し、それを知らなければなりません。自然のはたらきの中で、物質の変化を研究する学問を物化学(又は化学)と名づけていますが、ごく古い時代には、それもはっきりした意味では考えられていなかったので、とかく人間は自分勝手な虫のいいことばかり望んでいたのでした。例えばいろいろな金属のうちで黄金がいちばんすぐれたものとして尊ばれていたので、そこでほかの金属、すなわち鉄や鉛や銅などに何かのはたらきを加えて、それを黄金に変えようとして、大いに苦心を重ねたのでした。これはその頃錬金術と呼ばれていたので、その起りは古く紀元前三、四世紀頃にエジプトで始まったとも云われていますが、その後アラビヤを通じてヨーロッパに入り、十七世紀頃まで千数百年も続いたのでした。それでも実際にその頃やっていたような方法で黄金のできる筈はなかったので、それには何かの魔法が必要だと云われるようになったり、また後の時代になっては黄金をつくることはあきらめて、むしろ不老長生の薬を探し出そうということにも変って来たのでした。今から考えると、いかにもそれらはばかげているように見えますけれども、しかし古い時代にはそれも止むを得なかったのでありましょう。