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TORENDIA

桜林

本文約30,100字 ・ 読了時間 約61分

あらすじ(AIが作成しました)

新吉原の水道尻で生まれた少年は、かつて桜林と呼ばれた公園を遊び場にして育つ。貸座敷業を営んでいた厳格な祖父と、目の不自由な父、そして読書を勧めるお糸さんらに囲まれた日常を描く。少年は祖父の気難しさに怯えながらも寵愛を受け、父の稽古場である蔵の二階や祭りの喧騒の中で、家族との絆や幼き日の記憶を綴る。

小山清

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私は浅草の新吉原で生れた。生家は廓のはずれの俗に水道尻という処に在った。大門から仲の町を一直線に水道尻に抜けて検査場(吉原病院)につきあたると、左がわに弁財天を祀った池のある公園がある。土地の人は花園と呼んでいるが、その公園の際に私の家は在った。新吉原花園、そんな所書で私の家に音信のあったのを覚えている。子供の私たちは其処をまた「桜林」と呼び馴染んで、自分たちの領分のように心得ていた。事実桜林は私たちのチルドレンス・コウナアであった。

聞くところによると、明治四十三年の夏の水害と翌年春の大火とは、吉原とその界隈の町の有様を一変させたと云うが、私はちょうどその大火のあった年の秋に生れた。物心がついてまもなくあの大震災があった。震災は私たち東京人の生活に一時期を画したが、私としても自分の少年の日は震災と共に失われたという感が深い。

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