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TORENDIA

生い立ちの記

本文約20,900字 ・ 読了時間 約42分

あらすじ(AIが作成しました)

大正期の大阪で文楽師匠の弟子として暮らした幼少期の記憶や、東京の吉原外へと転居し成長する日々を綴る。全盲の父や周囲の人々との交流、折々の風景、関東大震災による弟の死や家屋の焼失までを、著者の幼い日の視点から淡々と描く。家族の営みと失われていく光景が、穏やかな叙情の中に静かに記録されている。

小山清

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思い出

私は数え年の二つのとき、父母に伴われて大阪へ行った。大正の始であった。

その頃、私の父は摂津大掾の弟子で、文楽座に出ていた。父は二つのとき失明した。脳膜炎を患ったためだという。父は十三四の頃初めて大阪へ行き、はじめ五世野沢吉兵衛の手解をうけ、その後当時越路太夫と云った摂津大掾のもとに弟子入りをした。祖父の姉で出戻の身を家に寄食していた人が、父に附添って行った。父は時々、学生の帰省するように、東京へ帰ってきては、また大阪へ出向いていたようである。その間に父は結婚して、兄と私が生れた。乳離れのしなかった私が連れられて行ったのは、父の最後の大阪行のときであった。

大阪のどこに私の一家が住んでいたのか、私は知らない。大阪の家には、父母と私と祖父の姉にあたる人(この人のことを、家ではひとつは祖母と区別するために、大阪おばあさんと呼んでいた)と、それから私の子守のしづやがいた。しづやも東京者で、私達と一緒に大阪へ行ったのである。東京の家には、祖父母と兄がいた。兄は私より二つ年上であった。

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