TRENDIA CLASSIC

『言林』跋

新村出

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ここにわが親愛なる『言林』の完成に当って一言を述べて記念としたいと思う。

平和後、思想・制度等万般事象の百八十度の転換、教育・文化さては文章表現法の激変等の結果、旧来の国語辞典が現代人の欲求を満たし得ないことは万人のひとしく認めるところである。社会人の飽くなき熱烈な要求にもかかわらず、当然あらわるべき良辞典の出なかったことは、文化事業に対する理解度や資金・用紙・印刷等の悪条件のあいろの打開に並々ならぬ労苦を要するからであろう。新進の出版文化人全国書房社長田中秀吉氏は文化開拓の実現を期し、荊棘の中に新路を開き、万難を排して国語文化革新の燈明台たるの意気を発露せられ、編者をして、この難事業を完成せしめられたることは真に感銘の至に堪えない。更に氏はその統理せられるところの新進の社員数十名を遇するに肉親的恩愛を以てし、全社員各位もまた社長に仕えること師父の如く、いわゆる天の時と人の和とを得たること、この辞典完成の偉大なる原因たることを信ずる。

本書収むるところの語彙十五万百五十二語、特に最新の外来語・新造語の解説に意を用いた。従って新刊行書・新聞紙等の恩恵を得たことが多い。外来語特に地理名などについては専門家小牧実繁博士の一閲を求め、又、説明文中の当用漢字の検討に対しては、栗林貞一氏の周到な調査・研究を煩した。併せてここに謝意を表する。

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