TRENDIA CLASSIC

『辞苑』跋

新村出

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『辞苑』のここに完成を告ぐるに当つて一言述べたいと思ふ。

顧みれば、近時、国運の急激なる進展に伴なつて幾多の新造語は誕生し、国語化せる外来語の激増亦とどまる所を知らず、又、吾人の煩瑣なる生活は、新旧広汎なる事項を包含する簡便化国語辞書を要求してやまない。換言すれば、新時代に適応する国語辞書は、従来の国語辞書に満足することを許さない。即ち一般大衆の要求する国語語彙の範疇は、普通にいふ所の国語語彙の蒐集にとゞまらず、人生に緊切なるすべての事項を包含し、これに拠つて、国語読本を容易に読解し、将又、新聞・雑誌上の事項を的確に会得し得るものでなくてはならない。而して一冊の辞書を以てして、この複雑した任務を遺憾なく果し得るものは、編者の寡聞なる、未だ之を発見するを得ない。これ、編者が本書を提供して批判を請ふ所以である。

本書収むる所の語彙、実に十五万八千百六十四語、古語より現代語と、新古の国語化したる外来語とに及び、国語的語彙の外に百科辞彙語類の大概を網羅し、附録に「難音訓索引」「字音索引」「字音と国語との仮名遣表」「常用漢字・略字表」「国字表」「文法に関する数表」を添附して、国語学習の便に資してゐる。

事項の広汎多岐なる、かくの如くなる以上、内容の周到なる検討と厳密なる校正、さては画図の作成、印刷上の工作等の完璧を期せんが為に、新進気鋭俊邁の士の助力を得るの必要を生ずるは、当然の事である。

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