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TORENDIA

綜合大學の圖書

本文約1,900字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

小泉八雲の藏書を巡るエピソードを通じて、富山高等学校の校長が私財を投じてまで図書収集に尽力した姿を回想する。著者は、新潟に設立される綜合大学において、単に名ばかりの大学を作るのではなく、十分な蔵書を備えた真に優れた教育の場を実現するためには、全県民が教育に対する熱意を持ち、自ら奮起して犠牲を払う覚悟が必要であることを説く。大学設立における精神的・物質的な要諦を論じる随筆である。

會津八一

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🎧 綜合大學の圖書 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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小泉八雲といへば、日本人の名であるし、日本人として東京の宅で死んでその全集は日本語で出版されてゐるが、父は英國のアイルランドの軍醫、母はギリシャのリウカヂアの娘、子供の時はフランスの叔母の手で育てられ、青年時代にアメリカへ渡つて文學者となり、日本へ來て出雲松江の中學教師となり、小泉といふ士族の家へ婿入りして、日本人になり、熊本の高校、東京帝大に轉任して英文學の講義をし、おしまひは早稻田へ來て亡くなつた。經歴からが世界的で、作物も世界的にひろく讀まれ、文豪の名が高い。

私もその最後の講義を聞いた一人だが、亡くなられてから、その三人の男の子たちの教育から家事のことまで、いつも夫人の相談を受けてゐた。ある日、夫人が宅へ見えられて、家計上の必要もあるから、八雲ののこした藏書を始末したいから、なるべく早稻田で買つてほしいといふことであつた。その藏書といふのは、日本造りの西大久保の宅で、フランス語の本が一室、英語と日本語の本が一室、純日本風の書物箱に納めて、ぎつしりと並べられてゐた。夫人の言葉では、官立の帝大から早稻田へ移つてから、ほんとに故郷へ歸つたやうに氣樂になつたと喜んでゐたから、書物も早稻田へ納めたい。法政大學では八千圓で頂戴したいといふけれども、早稻田ならその半分でもかまはないといふことであつた。

けれども、その話のまだまとまらぬうちに、夫人がまたやつて來られて、富山の高等學校から校長の南日さんが見えて、一萬圓でもいいから、是非こつちへ戴きたいといふから、どうしたものであらうかといふので、私もそちらに同意して、富山へ送つてしまつた。

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