本文へ移動
TORENDIA

子供と馬の話

本文約3,700字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

九月一日の大地震による甚大な被害を受け、日常の利便性が失われた東京や横浜で、避難する人々の群れや重い荷を引く疲弊した馬の姿が目撃される。関東一帯が困難に直面する中、人々の労力や犠牲によって平和な社会が支えられている事実が示される。本作は、被災地での出来事を通じて、人間同士の助け合いの精神や、人間のために過酷な環境で働く動物への慈しみの心を、父から語り聞かされる兄弟の姿を通して描く。

小川未明

速度
🎧 子供と馬の話 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 5

九月一日の大地震のために、東京・横浜、この二つの大きな都市をはじめ、関東一帯の建物は、あるいは壊れたり、あるいは焼けたりしてしまいました。そして、たくさんな人間が死にましたことは、もうみんなの知っていることだと思います。いままで動いていた汽車はトンネルやレールが破壊したために、もう往来ができなくなりました。また、毎晩華やかな街を照らしていた電燈は、装置が壊れてしまったために、その後、幾日というものは、都じゅうが真っ暗になり、夜は、ランプをつけたり、ろうそくをともさなければなりませんでした。

そんなように、いままでつごうがよく、便利であったものが、すっかり狂ってしまって、三十年も四十年もの昔に帰ったように、不便なみじめな有り様になったのでありました。

こういうめにあいますと、いままで、便利な生活をなんでもなく思っていた人々ははじめて、平和な日のことにありがたみを感じたのでありました。そして、また、それが昔のようになるのには、どれほど、多くの労力と日数とがかからなければ、ならぬかということを知ったのであります。

私たちは、けっして、ひとりでに、この世の中が便利に、文明になったと思ってはいけません。たとえば、一つのトンネルを掘るにも、どれほど、多くの人たちが、そのために苦しみ働いたかを考えなければならないのです。

また、電気が、にぎやかな街々につくのも、てんでの家にきたのも、そこには、たくさんな人たちの労力とそれに費やされた日数があったことを考えなければなりません。

こうして、この世の中は、みんなの力によって、文明になり、つごうがよくゆき、そして平和が保たれてきたのでありました。

けっして、自分独りが、どんなに富裕であっても、また学問があっても、この世の中は、すこしもつごうよくいくものでもなければ、また文明になるものでもないことをよく知らなければなりません。それを知るには、こんどの災害はいい機会といっていいのです。

小川未明の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本