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TORENDIA

お前は此の頃よくねむる

本文約780字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

戦後の荒廃の中で、敗戦を機に手元へ戻った子供を育てる母親の視点から、軍国主義的な教育に翻弄された過去と子供への深い愛情を綴る詩集である。かつては天皇の子として育てられた子供が、物分かりよく成長することへの悲しみや、軍人への憧れを抱くことへの苦悩が描かれる。十六歳になった子供に対し、真の人間としての誇りを取り戻すために立ち上がることを願い、新たな未来へ向けて深く眠り、遠くへ出かけていくよう呼びかける。

中野鈴子

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🎧 お前は此の頃よくねむる / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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お前は此の頃よくねむる

朝もなかなか目が覚めない

若いお前には深いねむりが必要なのだ

お前よ

お前は母の手に返ってきた

日本が敗けたとき

お前はわたしの子供となった

お前が生まれたとき

はじめてねむったあの時の母子のように

わたし自身によって生まれた子供として

母の誇りをもって抱くことのできる

何と言う喜びぞ

わたしは乳をしぼった

出ない乳をしぼり、つかれて痩せ夜もねむらずに

お前を育てた育てた

赤ん坊や わたしは仮の母親で

ほんとうは天皇様の子であって

お前の命は天皇様におあずけしてあるのだと

天皇の言葉を口にしながら

分けの分からぬ泪を垂らしながら

お前はだんだん 大きくなってゆく

母に甘えながら物分かりよく快活に

わたしはだんだんにかなしくなって行った

物分かりよく快活であることがかなしかった

お前の骨が太くなってゆくことがかなしかった

物思わしげなお前の目は西住軍人の伝記を読みはじめた

お前は言った

僕も負けないよ ね母さん

わたしはうつむいたまま立ち上がった

どうしてお前に人を殺させられよう

お前をどうして人から殺させられよう

わたしは半狂人のように

毎日めまいがつづいた

お前はわたしの手に返ってきた

日本が敗けた時

日本全土が焼け野原になったときに

たくさんの人が死に焼けただれ

家無しとみなし児になったときに

そして六か月が過ぎた

飢えと寒さにさらされたまま

荒れ果てたそのままに

そしてお前よ

何事か起ころうとしている

恐ろしい勢いで

素晴らしい力で

それはきっとお前

何も彼もが逆であったのだと言うことが

あきらかにされることなのだよきっと

どんなに歪められ胡魔化されていたかお前が天皇の子でなく

わたしの子供であったように

わたしたちの手にとりもどって来ることなのだよきっと

いまやっと十六になったばかりの

夜明けに立つお前よ

深くねむれ

今こそ出かけてゆけ

どんなに遠いところへでも

深く深く入って行け

とりもどすために

打ち樹てるために

完

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