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TORENDIA

新歸朝者日記

本文約36,400字 ・ 読了時間 約73分

あらすじ(AIが作成しました)

海外での長年の生活を経て日本に帰国した主人公は、変わりゆく故郷の空気や自身の生活に違和感を抱く。冬の寒さに閉ざされた日本の家屋の不完全さや、父との時代的な断絶、そして明治という時代の混沌とした現状を冷静に見つめる。西洋文化の影響を受けながらも、過去と現在の間で矛盾を抱える日本社会の姿を、自身の音楽活動や友人との対話を通して描く作品。

永井荷風

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十一月廿八日  あゝ丁度半年目だ。月日のたつのは早い。日本に歸つてからもう半年たつた。また今日も風か。何といふ寒い風だらう。十一月悲しき十一月、冬が來ると世界中何處へ行つても寒い。亞米利加から歐羅巴、地中海から印度洋を旅して來た經驗から考へても、要するに神の作つた地球上の天候は至る處人類の生活に適して居ない事が分る。暑くもなく寒くもなく、人間をして他の動物と同じやうに青草の上に横はつて心持よく青空を眺めさせるやうな時節は、春の末から夏の初めにかけてほんの一箇月ほどしかない。火を焚いたり衣服を着たりして、永世自然の迫害と戰つてゐる人間に向つて、神に謝せよ、神の光榮を歌へなどと、西洋人は實に妙な宗教を信じたものだ。

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