TRENDIA CLASSIC

歪んだ窓

山川方夫

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朝からの雨が窓を濡らしている。アパートの小暗い部屋の中で、レーン・コートを出し手ばやく外出の仕度にかかる姉を、彼女は隅っこから目を光らせて見ていた。

「いいわね? じゃ、ちゃんとおとなしくお留守番をしててね。すぐ帰ってくるから」

姉はいった。彼女は答えない。が、姉はそんな妹には、すっかり慣れっこになってしまっていた。そのまま扉に向った。

突然、彼女は低い声でいった。

「……もしもよ、もし佐伯さんが結婚してくれっていったら、お姉さん、結婚する?」

「まあ、なにを考えているの? あんたったら……」

姉はおどろいた顔で妹の目を見た。が、彼女はその姉の顔に、一瞬、うろたえた色がはしったのを見のがさなかった。……やっぱりそうなんだわ。お姉さん、あの男と結婚するつもりなんだわ。

かくしたってダメよ、と彼女は心の中で呟く。あの男が訪ねてくるようになって、もう三月近くになる。その間の定期的な訪問ぶり、お姉さんへのいい気な頼られている男の目つき、妹の私へのご機嫌とりめいた、ひどくやさしげな態度……。あの男の下心は明白だし、ときどき家に寄る前後に駅前の喫茶店で、二人で熱心に、こそこそと真剣に話しあっているのだって、私、何度かお姉さんのあとをつけてちゃんと知ってるのよ。……それに、私が彼のことを口にするたびに見せるお姉さんの、あのすまなさそうな苦しげな表情。いままで、こんなことは一度だってなかったことじゃないの。

「じゃ、行ってくるわね。あ、そう、私、駅前で夕御飯のおかず買ってくるわ。なにかあなたの好きなものさがしてくる。ね?」

「お姉さん……」

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