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TORENDIA

あるドライブ

本文約6,200字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

ある夫婦がドライブに出かける。夫は妻の不貞を突き止め、隠し続けていた執念深い怒りを露わにする。車中で夫婦間の緊張が極限まで高まる中、夫は妻との生活に終止符を打つべく、追いすがる男の車を牽制しながら車を走らせる。かつての愛情は冷えきり、疑念と憎悪が渦巻く車内で、二人の関係は取り返しのつかない事態へと向かっていく。愛憎が交錯する中で露呈した、冷酷な人間心理の深淵を描く。

山川方夫

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🎧 あるドライブ / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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「……本当に、こうして二人でドライブに出たのなんて、三月ぶりかな」

「そのくらいね」妻はシートに背をもたせて、目をつぶった。窓の近くを流れる濃い緑のせいか、それとも頭痛のためだろうか、こころもちその頬が蒼白く、冴えて見える。

「そのあいだ、日曜日だとか休みの日だとかいえば、貴方は欠かさずゴルフだったわ。……よく飽きなかったこと」

「子供でもいりゃ、気がまぎれたんだ」

「あら。もともとその子供がわりに、無理してこの車を買ったんじゃない? 一年まえ」

「そうだったね。……だが、それがとんでもないことになっちまって」

「とんでもないこと?」

「うん」夫は一瞬の間を置き、ゆっくりと苦く笑った。「たった五万円だっていうんで飛びついたんだが、五ダッシュの外車だろう? 税金は高いしガソリンは食うし、修理代はかかるし……」

「そうね。……買い替えたら?」

「一時はそう思ったよ。どうせならカッコいい国産の中型車でも、って。……でも、君は左ハンドルのほうがいいんだろう?」

「国産のだって、左ハンドルはあるわよ。輸出向きのだとか、外人用のだとか」

「へえ、そうだったの。じゃ、そうしてもよかったんだな」

しかし、車は支障なく走っていた。しだいに山は深くなって、凝結した血のような野生の葉鶏頭が、ところどころに赤い色を輝かせて窓の外を後ろへと飛び去る。

「……この車が、いけないんだ」

不意に夫がいい、妻は笑いだした。

「じゃ、早く売りなさいよ、そんなに癪にさわるのなら」

「売るもんか」

と、言下に夫は答えた。

「売ったって、せいぜいやはり三、四万だ。あとの金は捨て金になっちゃう。いや、計算したら、もっとひどいマイナスにしかならない」

「金利のこと? そろそろ車検も必要よ」妻は、笑い声をさらに大きくした。「ケチね、貴方って、ほんとに。……使ったお金ぐらい、自家用車の気分をたのしんだ費用だと思えばいいじゃないの」

「ケチっていうんじゃないんだ。ただ、もっと有利な処理を考えているのさ」夫は真面目な声でいった。「僕は、いったん自分のものにしたやつは、おいそれとは手放したくないんだ。……よっぽど有利な補償でもないかぎりは、面白くないのさ」

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