不調和な二人連れの不思議な男たちの不思議な話がいまだにサセックスのあのせまい海岸附近で語り伝えられている。この浜にはメイポール・アンド・ガーランドという、静かな大ホテルが庭から海を見晴らしている。おかしな組合せの二つの人影がその静かなホテルにほんとにはいつてきたのはあのよく晴れた日の午後であつた……一人は、褐色の顔と黒い顎ひげをかこむように、ツヤツヤした緑色のターバンを巻いていたので、日なたではひどく目立つて海岸一帯からよく見えた。もう一人は、ライオンみたいに長い黄色の口ひげと黄色の髪の毛をはやし、柔らかい真黒な牧師の帽子をかぶつていたので、いつそう気違いじみた不気味なようすだと思つた人もあるかもしれない。この男は少なくともたびたび姿を見せて、砂地でお説教をしたり、少年禁酒隊の礼拝を小さな木製のすきで指揮したりしていたことがあつた。ただホテルのバーにはいつてくる姿はたしかにいままでに一度も見せたことがなかつた。この変てこな二人連れの到着は物語のクライマックスであるが、そもそもの初めではない。そこで、かなり神秘的な物語をできるだけはつきりするために、初めからはじめるほうがよかろう。
この二つの目立つた姿がホテルにはいつてみんなの目を引く半時間前に、別の二つのごく目立たない姿もホテルにはいつてきて、だれの目も引かないでいた。一人は大男で、堂々とした美男であつたが、いつもうしろへひつこんで場所ふさぎをしないコツを心得ていた。ただ病的なほど疑つてその靴を検査したら、この男が平服――それもごく質素な平服を着た警部だということはだれにもわかつたろう。もう一人はいつこうパッとしないつまらない小男で、これも質素な服を着ていたが、ただ偶然に坊さんの服装だつた。しかしこの男が砂地でお説教しているところはだれも見たことがなかつた。