緑色の人
本文約21,100字 ・ 読了時間 約43分
あらすじ(AIが作成しました)
海軍提督の秘書ハロルド・ハーカーは、夕暮れの海岸で奇妙な儀礼服姿の士官を目撃する。提督本人と見られる男の背後を、不審な挙動の人物が剣を携えて追跡していた。その後、提督の溺死という報がもたらされ、ブラウン神父が調査に乗り出す。神父は死体の発見場所について不自然な言及をした弁護士を追及し、事件の真相を解き明かす。海軍への憧れと失望の狭間で揺れる人間模様と、神父の鋭い洞察が交錯する物語。
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半ズボンの青年が、血色のいい熱心な横顔を見せながら、砂浜と海に平行したリンクで、独りゴルフを楽しんでいた。あたりは夕闇で灰色になりかけていた。青年はむぞうさにボールを打ちまくつているわけではなく、むしろ特殊のストロークを人目につかない激しさで練習しているのであつた……キチンと身ぎれいにした旋風という感じであつた。この青年はいろんなゲームを手早く習得していたが、ふつうより少しでも早く習得したい癖があつた。どうやらそのために、六回のレッスンでバイオリンを習得する法とか、通信教授で完全なフランス語の発音を身につけられる法とかいうたぐいの人目を引く広告の被害者になりがちであつた。彼はこういう希望に満ちた広告や冒険のいきいきした雰囲気の中で暮していた。目下は、このリンクと境を接している大庭園のうしろに大きな屋敷を持つている海軍提督マイクル・クレイブン卿の個人秘書であつた。なかなか大望があつたので、相手がだれであろうと個人秘書をいつまでも続けるつもりはなかつた。しかしまた理性的でもあつたので、秘書をやめる最上の方法は立派な秘書になることだと知つていた。したがつて彼は大へん立派な秘書であつた……提督の通信物がドンドン集まつてきてたまつたのを整理するのにも、ゴルフボールを相手にするときと同じようにすばやい一心不乱の精神集中法を用いていた。彼はいまのところひとりで適当に判断して通信物と取り組まなければならなかつた。というのは提督はこの六ヶ月来船に乗つていたからである。そして、もう帰途についていたが、まだ数時間のあいだは――あるいはことによると数日のあいだは――帰つてこないはずであつた。