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TORENDIA

ピンの先き

本文約21,900字 ・ 読了時間 約44分

あらすじ(AIが作成しました)

建築中の巨大ビルディングで労使紛争が燻る中、経営者のサー・ヒューバート・サンドが失踪し、川岸に遺書と衣服が残される。ブラウン神父は現場の状況や関係者の言動から、このビルディングの床張り工事に隠された不審な点に気づく。神父は、サー・ヒューバートの甥であるヘンリが会社の資金横領を露見させた伯父を殺害し、その遺体を完成間近の床下に隠蔽したという衝撃の事実に辿り着く。

G・K・チェスタートン G. K. Chesterton

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ブラウン神父がいつも断言していたように、彼は眠つているうちにこの問題を解決したのであつた。そして事実そのとおりであつたが、ちよつと妙な所があつた。なぜかといえばそういうことになつたのはむしろ彼が眠りをさまたげられたときだつたからである。朝ばかに早く眠りをさまたげられたのは、ブラウンの部屋の向側に建築中だつた巨大なビルディング――つまり未完成ビルディングの中ではじまつたハンマーの音のためであつた。一家族ずつの部屋が積み重なつた巨大な建築で、まだ大部分は足場と掲示板でおおわれていた。掲示板には、建築者兼所有者として、スインドン・サンド商会の名前が出ていた。ハンマーの音が規則正しい間をおいてくりかえされるので、すぐそれとわかつたが、これはスインドン・サンド商会が新しいアメリカの床張り法を専門にしていたためで、この方法によると(広告に書いてあるとおり)完成後の平滑、堅固、不可侵及び永久の愉快が保証されるくせに、或る時期に重いハンマーで金具を叩きつける必要があつたのである。それでもブラウン神父は、この状態からでもささやかな喜びを引き出そうと努力して、おかげでいつも早朝のミサに間に合うようにおこしてくれるから、美しい鐘音のようなものだと言つていた。けつきよく、キリスト教徒がハンマーの音でおこされるのは鐘の音でおこされるのと同じくらい詩的だと、言つていた。実は、しかし、このビルディングの作業は、別の理由で、多少ブラウンの神経にこたえた。というのは半分建てかけの摩天楼の上に労仂危機の可能性が雲のようにたれこめていたからである……この危機を各新聞はどこまでもストライキだと主張して書き立てていた。実際問題としては、もしそんなことになつたら、職工締出しになりそうであつた。しかしブラウンはそんなことになりはすまいかと思つて、ずいぶん気にしていた。それからハンマーの音が注意力を疲労させるのは、それが永久に続きそうだからか、それともいまにも止まりそうだからか、そこがよくわからなかつた。

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