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TORENDIA

紙の洪水

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

アメリカ滞在中の著者が、新聞や買物袋、紙食器などによって日常的に発生する膨大な紙の消費と、その始末にまつわる諸問題を綴る。人手よりも紙が安価であるという経済的背景から、過剰に紙製品が利用される現地の状況を描き、森林資源への影響や浪費がもたらす社会的な矛盾を考察する。

中谷宇吉郎

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🎧 紙の洪水 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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アメリカの話も、もう皆鼻についているので、あまり書くこともない。しかしホテルに泊っていたのでは、一寸気のつかないこともあり、そういう話なら、少しは面白いことがあるかもしれない。しかし私はまだそのホテルに住居をしているので、書く資格が出来ていない。もう十日くらいすれば、家族の連中も到着するので、そうしたら、また種が出て来ることであろう。

ところで、家をもつと、一寸気のつかない点で、いろいろ困る問題がありそうである。その一つに、紙の始末という問題があるという話をきいた。一寸油断をすると、すぐ何貫目という紙がたまり、それに紙袋だの、汚れた紙食器だのというものは、嵩も大きくなるので始末に困るそうである。もちろんそういう廃物を集めに来る男があるが、あまり嵩張ると、大分チップを奮発しないことには、持って行ってくれないという。

アメリカの新聞は、御承知の如く、普段の日でも、十六ページくらいあるのが普通で、日曜などは、二十四ページにもなる。それに付録がつくことが多い。なるほどああいう新聞を、二種類もとっていたら、みるみるうちに、新聞紙の山が出来ることであろう。それから買物に行くと、どんな小さいものでも、馬鹿げた大きい紙袋に入れてくれる。少し目方のかかるものは、いやに丈夫な大きい紙袋で、太い紐でぶらさげられるようになっているものに入れてくれる。葡萄酒の罎を六本入れて下げてもよい紙袋だから、その丈夫さの程度は、想像されるであろう。

この頃は、夏休みのシーズンであるから、ドラッグストアや十セント店には、ピクニック用のものが、たくさん出ている。ほとんど全部紙製の食器である。「なぜ汝は皿を洗うか」というようなスローガンが書いてある。

牛乳は、この頃日本へも来ているような、カートン入りのものが、大部分である。いずれも人手よりは紙が安いから、大いに紙を浪費しているわけである。荷造りの箱も、御承知の如く、特別に重い場合を除いては、ほとんど全部紙函である。もっともこの方は木箱にするよりも、ずっと木材の消費節約になるので、日本も早くこの紙函工業を起こした方がよい。

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