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TORENDIA

救国論

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

食糧不足に直面する戦後日本の現状をふまえ、自立のための食糧増産と経済的独立について論じる。米の輸入に依存する現状を打開する手段として、日本酒の対米輸出を提唱する。米国では日本米の生産が拡大していることに加え、日本酒の人気が定着している現状を指摘する。日本酒を輸出し、その対価を米で得るという方策を通じ、国内の食糧自給率向上と安定的な国家運営のあり方を具体的に検討する内容を収める。

中谷宇吉郎

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🎧 救国論 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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現在の日本は、どうひいき目にみても、安定した国の姿ではない。米ソ両陣営の谷間にもがいているというのは、少し極端であるが、その傾きがなくもない。問題は、今の四つの島からの生産では、九千万人に近い人間が生きて行くのに必要な物資が、生産されないという点にある。

その一番わかり易い例が、食糧である。今年は例外であるが、平年では、少なくも一千万石の米に相当する食糧が足りない。その食糧、あるいはそれを輸入する外貨を、外国の援助によって得ているうちは、実質的の独立は出来ない。すべての悩みの根元は、ここにある。

それで何か全部の日本人が、外国の助けを借りないで、腹いっぱいに「白米」が食えるような方法が見つかれば、それが現時における最善の救国論になるわけである。「白米」というのは、われわれ日本人が最も喜ぶ主食という意味である。

政府の方でも、もちろんこの点は充分に考えて、米の一割増産とか、土地改良とか、いろいろな施策を講じておられる。しかしそのほかに、現在考慮を払われていない妙案が一つある。それは日本酒を輸出するという案である。

これには、二つの資料があって、その一つは、米国の米の生産が、近年急激に増して来て、それが日本の一等米、或いはそれ以上の品質になっている、という点である。近年米国南部および加州の一部では、水田米作が普及してきて、肥後の寿司米のような米が、どんどん出て来ている。亜熱帯の気候で、水田米作には絶好の地理的条件にあるので、別に不思議なことではない。土地はまだまだ充分にあるので、需要さえあれば、米はまだいくらでも出来る。

いま一つの資料は、米国人が、日本酒を案外に好むという点である。いつかワシントンで、もと司令部にいた人のところを訪れたら、日本酒を出された。誰かに貰ったのかときいたら、「ワシントンの酒店で、日本酒を売ってない店は一軒もないよ」という返事であった。

事実、シカゴでも、パーティに人をよんで、日本酒、ウイスキー、カクテルと揃えておくと、十人中九人まで日本酒を所望する。初めは好奇心であるが、飲んでみて、誰も彼も、非常に美味いと感心する。まんざらのお世辞でもなさそうである。

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