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TORENDIA

はやい秋

本文約6,300字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

東京に帰ってきた少年は、夏の間、海辺で偶然出会った美しい女性に心を奪われる。一人で会話をしながら泳ぐ彼女の姿を岩陰から見守っていた少年は、その言葉に触れ、彼女が抱える孤独と生活の重みを垣間見る。その後、同級生の母親であることを知った少年は、年齢差と日常の隔たりに絶望し、大人への憧れと届かぬ恋心を抱えたまま、秋の気配の中で現実の少年としての生活へと向き直る。

山川方夫

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🎧 はやい秋 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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東京に帰ってきた彼は、見違えるように逞しくなって、ひどく日焼けしていた。ほとんど毎日海で泳ぎ、鼻のあたまの皮も、三、四へんは剥けたようだという。

だが、ふしぎにその日、彼には元気がなかった。こっちがいくらエンジンをかけようと努力しても、すぐ彼の目はうつろになり、いつのまにか、窓越しにまだ早すぎる秋の空をぽかんとみつめている。

なんとか気分を変えねばならなかった。私は煙草に火をつけ、からかうようにいった。

「いったい、どうしたんだ? 彼女にでもふられたのか?」

彼は、すると怒ったような目つきで、私の顔をながめた。鼻のさきでわらった。

「……ふん。ふられたなんて。でも、ふられるほうがまだましかもわからないな。とにかく、ぼくはアタマに来ちゃったんだ」

それから、彼はゆっくりと話しだした。

今年も海はジャリでいっぱいでね。落着いて泳げるようになったのは、やはり八月の半ばを過ぎてからだったな。土用波が来はじめてね、ジャリたちはむろんのこと、もっぱら示威的に海岸を歩きまわるだけの女たちも、それにチョッカイを出すので夢中な男たちも、おっかながってほとんど海に近寄らなくなる。こういうときなんだよ、海が、ぼくたち純粋に海をたのしむ連中だけのものになるのは。……

あれは、八月の十六日のことだ。その日は月おくれのお盆とやらで、土地の人間は海に入らない。ぼくが同級生の牧田と海岸でぱったり顔を合わせたのも、その日だった。

牧田も今年は一家でその海岸に来ているんだといった。東京の家も近かったし、べつに仲の悪い友達じゃない。いや、仲が悪くなるほどつきあったことがない、といったほうが正確かな。まったく、面白くもおかしくもないやつでね、牧田という男は。

その日も、一人前にアクア・ラングの道具かなんかを得意げに肩にかついでてね。あんなものは子供のおもちゃさ。要するにお子様族なんだよ、牧田は。

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