TRENDIA CLASSIC

正宗白鳥

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銀座の裏通りに、和洋何れともつかぬせゝこましい二階家がある。壁の柱も汚れて、外から見ると寢ぼけてゐるやうに見える。二階は通信社で、階下は鞄屋。鞄屋は小さいながら老舖で中々繁盛してゐる。通信社は創業まだ日淺く、萬事整頓しないが、活氣は充滿してゐる。社員凡て十數人。

毎日十二時近くなると、細い谷のやうな所の危かしい階子段に、靴や下駄の音が騷々しく續く。その音の加減で、誰れだ彼れだと、給仕の耳にもちやんと區別がつく。何時も急用ありげに、チヨカ/\と驅け上るのは坂本さん。ドシン/\と踏み占めて泰然として入つて來るのは安田さん。閑雅なのは荒野さん。雪踏をちやらつかせるのは村松さん。

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