今日はよく晴れ上がって
本文約650字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
村の苗代に種がまかれる晴れた日、田圃での労働に情熱を注ぐ「わたし」の姿を綴る。田圃が減り、肉体が衰えていく中でも仕事と労働への愛を深め、汗を流しながら生きる意味を問い直す。土地や米作りへの執着を通して、労働の価値や社会的な責任、自身の生き方を省みる。やがて、手術により田圃へ入ることが叶わなくなった「わたし」が、過去の熱中した日々を回想し、その孤独な心境を詩情豊かに表現する一編である。
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今日はよく晴れ上がって
村じゅうの苗代に種がまかれた
鍬では切れない土のかたまり 切り株の切れ端を深く埋める
手で埋めて撫でてゆく
きれいに水をはって消毒した種をまく
雨のふらない風の吹かない晴れた日にまく
わたしは外へ立ちながら苗代の人だかりの方をながめていた
いろりの場所ほども耕されたらと笑われながら田圃に入り
足りないところは田圃を売り
病気の母を放っておき 湯もわかさず
破れた傘もそのままにして
わたしは少しずつ上手になっていった
田圃は減ってゆく
わたしは痩せながら四十が五十になってゆき
田圃と労働を愛していった
つかれたと思うひまもなく田圃に熱中した
熱中しながら愛していった
田圃と自分のはたらき
善意といい 真実といい
不労所得の中でのふるまいは空まわりに過ぎないと知った
田圃を愛する 仕事を愛する
愛すれば愛するほど痩せてゆくことの問題の持ってゆく
ゆきどころが見えるようにかんじることもできた
印を捺して金を借りる責任を持つ
金の出どころ 利息の行方など
自分の汗がいろいろの智恵をしぼり出す汗ともなってゆくことも知ることができた
競うように苗を植えてゆくそとめ
そとめさんらは酒をのむ
また来年もきますざという
うすをすって俵に米をはかるとき
はじめて稲を刈るとき
わたしはいそいそとかおをほてらし
頭にとどく稲束を背中にかついで小屋に運ぶ
雨の漏る屋根にはワラを刺し
小さい手に鍬の柄は細く
汗のためには眼鏡もはずし
一途に愛を深めていた
いましょんぼりと垣根にもたれてながめている
わたしの苗代に人の種がまかれた
ふたつの手術がわたしを田圃へ入らせない
完